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学長と外部有識者との対談

長岡技術科学大学に期待すること(平成27年12月4日)

東 信彦 長岡技術科学大学長 × 古出 哲彦 学長アドバイザー(大光銀行頭取)

地元企業として長岡技術科学大学に期待すること

東学長 本日は、お忙しい中お越しいただき、ありがとうございます。大学の使命は教育、研究、そして社会貢献ですが、私たちをとりまく環境は加速度的に変化しており、特にグローバル化は増々スピードアップしています。20年後、30年後の日本を支える人材の育成や、未来を見据えた研究などが大学に必要であると考えますが、長岡技術科学大学に期待すること、色々なご意見等をいただきたいと思い、対談の機会を設けさせていただきました。よろしくお願いいたします。

古出頭取 国立大学法人は教育と研究、私ども銀行は金融を本業としているわけですが、お互いに公共性の高い性格を持ち合わせています。地域社会に対する貢献を強く求められているという点では共通する所が多いのではないかと感じております。当行では、少子高齢化が進み地域経済が縮小傾向にある中で、これまで以上に「地方創生」への取り組みが重要と捉えております。当行は、第10次中期経営計画の中で、地域密着型金融のさらなる進化を推進しております。具体的には、お取引先との継続的な対話を通じて地域企業が抱えるニーズを把握し、ソリューション(課題解決策)の提案を積極的に展開しています。地域における製造業者の中には技術力の向上、自社製品の高付加価値化などに課題感を持っている企業が相当あると感じております。技科大におかれましては、相当の知見を「地方創生」に役立てて欲しいと期待しています。

東学長 地域の国立大学が担う役割の一つは、やはり技術力。地域企業の技術的な課題を解決し、技術力の向上に貢献することです。それから人材育成と人材供給。人材育成は本学の学生だけでなく、地域の中小企業の若い技術者など社会人も含め、技術力の向上や共同研究など新しいものを開発するような教育です。人材供給は本学の卒業生を地元に就職させるという使命があります。もう一つ重要だと思うのは、国内消費がどんどん小さくなっていく中で、日本の未来を考えるとやはり海外に求めていかないと地域活性化は成り立たない。地元地域で物をつくり海外に売るための支援は必要かなと。まだ先の事だと思い手をこまねいていると、欧米など海外諸国に攻められてしまうということもありますので、やはり大学が先になって情報収集しながら地域の皆さんと一緒に、世界に攻めていく体制をつくらなければいけない。 ポイントは3つですね。地域の中小企業の技術力が更に向上するための貢献。地域中小企業の技術的な問題、ニーズを一緒に解決し良い製品をつくるための貢献と、人材教育と供給。最後に、グローバル化に対して海外展開するための支援ですね。その3つが、本学が地域に対して貢献できる事だと思っております。

古出頭取 当行行員にも技科大出身者がおりますが、専門性を活かしつつ、広く活躍してもらっています。優秀な人材を育成していただいたことに私どもとしても感謝しております。技科大というと理系中心ですが、当行では技科大のほかにも理系の素養を持った人たちが活躍しています。

東学長

東学長 そうですね。特に本学は今後の方向性として、ビジネスができるエンジニアを教育したいと思っています。これまで、経営、情報などの授業はありましたが、あまり強くしてきませんでした。今後は自分で起業、あるいは企業に勤めてもプロジェクトを起こし経営まで考えられるようなエンジニアを育てる必要があります。技術だけではないビジネス志向のドクターを育成するため、平成27年度から5年一貫制博士課程の技術科学イノベーション専攻を開設しました。ベンチャー起業などの演習もしつつ、日本だけでなく、グローバルな視点でイノベーションを興せるビジネス志向の博士を生み出していかないといけない。経営や法律まで幅広く学びながら、チームワークやリーダーシップも発揮できるような人間力をつけることも必要です。色々な国や分野の人と協力しながらプロジェクトを引っ張っていける、そういう教育を目指しています。

技術科学イノベーション専攻について

古出頭取 私どももお客様に選ばれ続ける銀行として、従業員一人ひとりが高いスキルを身につけていく必要があると考えています。銀行全体で見れば営業担当者の能力底上げであり、個々の行員の目利き力の向上です。目利き力という言葉をよく使いますが、専門性の高い人材の育成はまさに銀行の重点施策です。5年一貫制博士課程は、グローバル産学官ネットワーク(グローバル産学官融合キャンパス)を土台とした技学教育で、世界で活躍でき、イノベーションを興せる能力を持ち、日本及び世界の産業を牽引する特に優れたリーダーを育成していこうというものですね。

東学長 今、起業と言っても日本の中だけでものを考えてもダメ。新興国ではあと10年20年経てば更に産業は発展し、経済も増々大きくなっていく。現地の人たちはものの考え方も違えば文化も違う。新しいことを考えるには、まず現地の人と共同研究するなり、現地企業と一緒になってやっていかないといけない。とにかくそういう所に本学の学生に行ってもらい、グローバルな考え方を身につけてもらって、色々な所に色々な価値観があって、どういうものがこれから流行るのか等を勉強してもらいたい。それで初めてグローバルな視点で新しいイノベーションを興せる人材が育つのだと思います。私どもの大学は色々な所に海外拠点大学を持っており、交流も盛んです。それぞれの拠点大学にある本学のオフィスを中心として、現地企業とこれから日本から進出しそうな企業を今探しているところです。そこで人材教育と人材供給を進めていこうと思っております。

リーダーシップについて

古出頭取

古出頭取 イノベーションを興せるリーダーを養成していくということですね。そこでリーダーシップについてお伺いします。日本の南極観測は昭和31年に国家プロジェクトとして開始されたと聞いていますが、東学長は平成6年から南極観測隊ドームふじ越冬隊長として活躍されていたそうですね。マイナス80℃まで達する厳しい環境の中で1年間越冬されて、隊長として強いリーダーシップを発揮されたと伺っております。様々なミッションが求められる一方で長期間閉ざされ、且つ過酷な環境の中で大変ご苦労されたと思いますが、隊としてミッション達成に向けて取り組んだことなどを教えて頂けますか。

東学長 強いリーダーシップって最近よく言われますが、なかなか難しい話でしてね。「私はこうやるんだ、手伝ってくれ」って引っ張って行こうとしても、難しいプロジェクトであればある程、そう簡単にはついてきてくれません。私は南極の一番奥地の富士山くらいの高さで、気圧も平地の半分より少し高いくらいの非常に気候も厳しい所で、三千メートルのボーリングをするプロジェクトでした。プロジェクトには医師や料理人、各種専門家の方々が参加します。大勢の人たちと一つのプロジェクトに力を合わせてやっていくのはそう簡単ではありません。まず本気でやりたいということを分かってもらう事が重要。その上で、一生懸命やっている姿を見せて、誰もやりたくない1番大変なことを自らやる。リーダーだからといってただ命令するだけではついてきません。リーダーシップというのは引っ張っていくというよりは、本気でやりたいんだということを伝える。そのうちに段々周りが分かってくる。「分かったよ。俺は反対だけど、じゃあやるよ」という所まで行けば、だいたいみんな動き出すと思います。でも、この方法は時間がかかります。「学長のリーダーシップで強く進めなさい」とよく言われるのですが、それをやれば早い事は早いですけれども、上辺だけになる。だから私は「機関車だけは進むけど、後ろの客車はついてこないよ」とよく言っています。少し時間がかかってもとにかくみんなに理解してもらう、分かってもらう。それが重要かなと思いますね。

古出頭取 「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」が浮かびますね。リーダーシップというのはどの組織でも共通する所がある気がしますね。

国際展開・連携について

古出頭取 先ほどから、グローバル展開というお話が出ていますが、国際展開・連携について先生のお考えをお聞かせいただきたいと思います。今、技科大では、スーパーグローバル大学創成支援事業を手がけておられますが、当行ではにいがた産業創造機構(NICO)、日本貿易振興機構(JETRO)、中小企業基盤整備機構などの各関係機関と連携し、中小企業の海外展開支援を積極的に推進しております。支援内容としては、貿易や現地進出に関するご相談をはじめ、海外現地リースや国際物流業、海外コンサルティングに関する専門機関のご紹介などを行っております。国内市場の縮小が懸念されているわけですが、地域企業のグローバル展開は地域を活性化する大きな要素の一つと考えております。そこで地域企業が、海外市場への展開を考えた場合に、大学としてどのような支援をお考えでしょうか。

東学長 現地の情報と人材のネットワークに関して支援できると考えています。地元地域で、日本でつくった製品を海外に売る、海外で市場拡大していかなければならない。我々は新興国の海外拠点大学とグローバルなネットワークを持っており、人材と情報の供給ができるだろうと。その上で現地では、どういう技術開発を求めていて、どういう製品なら売れそうか等分析し、それを基に地元の中小企業と一緒になって付加価値を高めたオンリーワンの製品を開発していきたい。「こういう部品や機械が欲しい」という情報を我々はネットワークで持っています。日本企業がいきなり行っても、たぶん成功しない。現地の人といかにうまくやっていくか、そこで我々が支援できるのではないかと思っています。

古出頭取 このスーパーグローバル大学創成支援事業での技科大の取り組みのように、地域から期待されること、地域における役割や存在意義は、重要であると思います。地域企業のグローバル展開における支援を期待しています。

東学長 国立大学法人は運営費交付金の削減による厳しい状況にありますが、長岡技術科学大学の役割を認識し、教育・研究に取り組んでいきたいと思います。今後もご助言のほど、よろしくお願いいたします。本日は、ありがとうございました。