VOS,No.104

 CHALLENGE CALLENGE !大学改革!!
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高等専門学校への遠隔授業の提供
経営情報系 教授 根木 昭
講師 樋口 良之

 平成10年3月に大学設置基準が改正され,大学・大学院にあってはマルチメディアを活用した遠隔授業が制度的に可能になった。これにより,大学相互の単位互換の推進が期待されている。本学の場合,この遠隔授業は,高等専門学校との連携を深めていく手段としても,今後,ますます重要になると考えられる。現在,高等専門学校の専攻科修了要件の一つに,大学で実施する授業16単位の履修がある。本学が,今後,遠隔授業でこの16単位分を提供できるよう,制度面,実務面での対応が可能となれば,高等専門学校との間で一層密接な関係を築くことができる。
 このため,平成12年度のマルチメディアシステムセンターの事業として,衛星通信によるSCS(SpaceCollaborationSystem)を活用し,14の高等専門学校へ向けて,2単位分の遠隔授業を試行的に実施している。その概要は次のとおりである。
<実施形態>
授業名:先端科学技術と経営工学
講 師:経営情報系樋口良之
期 間:平成12年10月3日(火)から平成13年1月30日までの毎週火曜日16時10分から17時40分(全15回)
概 要:科学技術と経営工学の基礎的概念を理解する。また,幾つかの先端科学技術を取り上げ,そのメカニズムを理解し,適用される経営工学の各種解析方法を学習する。さらに,講義を総括し,双方向遠隔授業システムの機能をフル活用したディスカッションを行う。
内 容:
基礎講座第1回(10/3)科学と技術の誕生第2回(10/10)経営工学の歴史
応用講座1第3回(10/17)生産システムから生産情報システムへの転換第4回(10/24)国際標準化とモノづくり第5回(10/31)IT(情報技術)と経営戦略
応用講座2第6回(11/7)プロジェクトと経済性工学第7回(11/14)巨大プラントの運用事例:原子力発電所第8回(11/28)巨大プラントの施工と日程計画法
応用講座3第9回(12/5)物流システムの設計と待ち行列理論第10回・11回(12/12)システムシミュレーション技術(その1・その2)
応用講座4第12回(1/9)生産・消費社会とデリバティブ取引第13回(1/16)推論技術(その1)第14回(1/23)推論技術(その2)
総括第15回(1/30)全体の総括及びディスカッション
 この試みは,現在,進行中であるが,これまでの経験から,おおむね次のような感触を得たところである。遠隔授業は,通常の教室での授業とは異なり,全国をカバーできる広域性,情報を全国各地で同時に受けられる同報性,放送では得られない双方向性などの多くの特長を有する。しかし,これらの特長は,同時に,受講者とともに授業を作り上げていく講師に,新しい課題を提供する。例えば,全国に点在する遠隔教室をいかに一体化させ,孤立した教室が存在しないようにするか,マルチメディア教材と講師の口述をどう組み合わせるかといった授業中の問題に加え,授業時間内に理解できなかった学生のフォローアップをどうするかなどの授業外の課題もある。
遠隔授業風景

 これまで,本学では,数時間程度の単発的な講演,討論を数多く実施し,ノウハウを蓄積してきたが,単位認定に結びつく長期間にわたる講義は今回が初めてである。このため,ティーチング方法と評価,各高等専門学校との共同運用などについて日々検討し,改善を加えながら目下この遠隔授業を進めているところである。


「海外語学研修」―マニトバ大学で第1回目実現―
語学センター 助教授 小山由紀江

 今夏7月末から4週間,マニトバ大学で開かれた英語集中講座に本学の学生五人が初めて参加した。準備期間が短かったため,何人の学生が参加できるか懸念があったが,3年生から修士1年まで様々な専攻の学生が参加し,多くのことを学んで帰ってきた。
 マニトバ州はカナダの真ん中,東海岸からも西海岸からもほぼ等距離の所にある。南はアメリカとの国境からそう遠くない。街はどこまでも続く真平らなプレーリーに囲まれ,一歩市外に出ると見渡す限りの小麦畑だ。大学は街のはずれに位置し,広大なキャンパスにはレンガ造りの建物が緑の中に点在して美しい統一感を保っている。
 学生たちが滞在した寮は安全でシャワー・TVなどの設備も整い,快適なものだった。完全な個室なので勉強にも専念できるし,プライバシーはきちんと守られている。
 メインはもちろん,朝9時から午後3時まで続く英語の授業。毎日5科目を勉強し,宿題をこなしてゆくのは楽ではない。しかし,参加した学生たちはこの研修を通して英語学習の意義を深く理解し,その楽しさを様々な形で経験したようである。帰国後,異口同音に「もっと長く居たかった。」と言っていたことからもそれがよく分かる。授業で英語に関する知識を得たことも大事だが,他国からのクラスメートと英語でコミュニケートすることによって,価値観の多様性に触れ,より広い視野を持てるようになったことも大きな収穫の一つであろう。マニトバの経験は「始めの一歩」に過ぎない。しかし,この経験が今後の英語学習への更なるモーティベーションとなり,ひいては参加した学生たちがごく自然に世界を視野に入れて動けるエンジニアへと育ってゆく,そういう可能性が一歩現実に近づいたように思う。
英語授業風景
 来年度からは,高橋勲先生の御尽力により,一定程度の奨学金を出す制度もできそうである。ますます多くの学生が参加することを期待している。


異文化コミュニケーション
環境システム工学専攻1年 高橋 信繁

 今回のカナダ・マニトバ大学4週間英語研修プログラムは,私にとって初の海外生活となりました。滞在中なんといっても楽しかったのが,同じ英語研修に参加している学生との交流でした。英語を学ぶのは日本人だけではありません。台湾,メキシコ,韓国など世界各国から学生が集まってきています。メキシコ人はあまりにも明るい人たちばかり,バスでの移動中彼らは歌うことをやめません。国民性の違いというものを初めて肌で感じることができました。台湾人は日本についてやたらと詳しく驚きの連続,日本のドラマ,アニメ,漫画,音楽等がかなり伝わっているとのことで,漢字を使った筆談も加わり,日本と共通の文化を持った外国の存在を認識することができました。
 今回の研修で英語力が格段に上がったということはないでしょう。しかし,英語の学習方法についてのきっかけをつかむには十分であり,またそれ以上に,海外の異文化に触れ世界各国の人たちとの交流を持てたことが,自分のそれまで持っていた価値観にまで影響を与える良い経験となりました。
コロンビア大氷原で(筆者は上段右)


外部評価シンポジウムから
機械系 教授 矢鍋 重夫

[1]はじめに
 大学の教育研究に対する産業界からの強い批判,国家財政の観点からの独立行政法人化,18歳人口の激減による大学存在基盤の危機などを背景として,ここ数年,大学改革のための自己点検・評価,外部評価が広範に議論され,作業が進んでいる。本学は,1999-2000年にかけて作業を終了し,この10月4日に外部評価委員及び海外からの参加を得て,外部評価シンポジウム−教育の現状と将来−を開催し,活発な議論を行った。ここにシンポジウムの内容について報告する。
[2]外部評価シンポジウム
 本シンポジウムは,下記2.1,2.2項に関する本学教官4名のプレゼンテーション及び海外から招いた教官1名の講演があった。それぞれの内容について紹介する。
2.1本学教育の現状とカナダの工学教育
(i)「本学における教育の現状」では,本学カリキュラムの特徴(実践的能力向上を目指した,実験・実習の充実,実務訓練,シニアテクニカルアドバイザーの活用)及び入学資格者の拡大と多様化について説明があった。
(ii)「教育効果の評価と改善点」では,平成11年に行った修了生・企業アンケート調査結果から,本学修了生の専門能力は高いが,英語力や国際感覚などが低いこと,また,本学に対して学生のやる気を引き出す教育,問題発見・解決能力向上を目指した教育を行うよう強い要望があったことなどが紹介された。
(iii)「カナダの工学教育」では,(a)マニトバ大学における教育・研究面での改革例,(b)大学評価,(c)教官業績評価について説明があった。(a)では,ユニバーシティワン(大学予備教育),リサーチパーク及び経済活動に直結する研究の推進,(b)では,JABEEに相当する6年に一度の教育プログラムに関する厳しい詳細な審査があること,(c)では,研究,教育,社会貢献,技術革新(特許や新発見)などの項目があることなど,本学改革に役立つ情報が得られた。本講演に対して,大学教官の昇進基準や教育評価について質疑応答があった。
2.2将来に向けて−本学が育てたい卒業生・修了生像−
(i)「外部評価書で求められている本学修了生像とその実現方法」では,グローバル化した世界で活躍できる問題発見・解決能力を備えた自己完結型の高度専門職業人の育成を目指して,外国語能力の向上のためTeamteaching,Oralpresentationなどの充実や海外語学研修の拡大などの提案がった。
(ii)「修了生の具体像と方策」では,応用学力,科学技術のソフト面への対応能力,社会人感覚,国際性の涵養(かんよう)を目指した種々の方策について広範な提案があった。
 総括討論では,テクニカルライティングの教育効果についてその重要性を指摘する意見と,技術的なことであり大学教育の本質部分ではないとの意見が出された。また,大学の個性化の一方策として,マルチディシプリントレーニング(例えば,複数専攻)を導入してはどうかとの提言があった。
[3]おわりに
 本学の理念は「創造的,実践的能力を備えた指導的技術者の養成」であり,その実現に向けて教育改革の議論が一層前進するよう切に望むものである。教育改革の視点として,専門能力,英語力,リーダーシップ,学生満足度などが挙げられると思う。なお,本シンポジウム全体の報告書が刊行されるので,詳細はそちらを参照して頂きたい。
外部評価シンポジウム