VOS,No.107

 にいがたみてある記 シリーズ58 [Back]

にいがた釣りある記(川釣り編)

下村 雅人    

早春の栖吉川(長岡市新保2丁目)
 以前,このシリーズのNo.44に「にいがた釣りある記(海釣り編)」と題する拙文を載せていただいた。迂闊(うかつ)にも海釣り編などと書いたことが原因で,今度は川釣り編を書くことになってしまった。
 筆者は川や沼でも釣りをするが,渓流釣りやアユ釣りなどはせず,ヘラブナ釣りのような仙人の境地にも達していない。要するに,川釣りに関しては自他ともに認める素人であり,筆を執る資格があるかどうか疑わしい。読者の皆様のなかに川や湖沼の釣り名人が多数いらっしゃることと思うと赤面の至りである。次は,名人編と題して,その道の達人から究極の技や秘境のごとき釣り場を紹介していただくことにして,何とぞご容赦願いたい。
 ところで,素人のくせになぜ川釣りをするのかというと,筆者宅から徒歩1分のところに栖吉川が流れていて,ここが結構面白いからである。釣れるのはフナ,コイ,ニゴイ,ウグイ,オイカワ,カワムツ,ナマズ,カマツカ,ギギ,モロコ(以上は魚),モクズガニ,カメ,タニシ,カラス貝,ゲンゴロウ,スイカの皮,大根など枚挙にいとまがない。エサは畑で掘ったミミズを使うのでお金はかからない。
 海を専門とする筆者といえども,そこに魚が泳いでいれば,川でも,ドブでも,水族館でも,竿を出したくなる。釣りバカというよりも,これは一種の病気と考えていただいて結構である。
 あるとき,栖吉川でフナをねらっていたところ,50cmほどのコイが掛かってしまった。手元に網があったので何とか取り込んだものの,針は奥深く飲み込まれていて,しかも暴れた勢いで細いハリス(針についている糸)は切れてしまった。庭の池にしばらく入れて泥臭さを抜いてから食べてやろうと持ち帰ったのであるが,すぐになついてしまい,食べるわけにはいかなくなった。やがて,大きさが増して庭の小さな池では窮屈そうになってきたので,栖吉川に帰ってもらうことにした。
本文に登場したコイ
 大きなコイがいなくなったついでに,池の水を抜いて掃除をしたときのことである。底から見覚えのある小さな釣り針が出てきた。あのコイが飲み込んだものに違いない。なぜなら,それ以外には針を飲み込んだ魚を池に入れたことはないし,庭で釣りをしたこともないからである。一体どのように排泄されたものか,あるいは吐き出されたものか。いまだに不可解であると同時に,手足も道具も持たない魚が体内に引っ掛かった異物を自ら排除したことにつくづく感心させられた。恐るべき生命力である。

(生物系 助教授)