VOS,No.108


 学長再任あいさつ [Back]

0 再任にあたって
長岡技術科学大学学長
服部  賢

 大学から東に目をやれば,長く横たわる東山連峰,その奥に遠くは飯豊の山々から,粟が岳,守門岳,越後三山が望める。季節によって,天気によって,そして朝から夕方まで太陽の動きにつれて趣を変える。この4年間その美しい眺望を楽しんできた。私の部屋を訪れる人の多くがこの眺めを喜んでくれる。眼前に広がる豊かな緑に心が和むからだと思っている。
 去る7月初旬,学長に再選されて9月16日よりさらに2年間の任期を頂戴(ちょうだい)することになった。信任いただいた教官各位に深く感謝の意を表すると共に,その信任にこたえるべき努力を尽くす所存である。
 月日のたつのは速い。雨が降れば泥濘(でいねい)と化したこのキャンパスに意気盛んな1期生を迎えたのもついこの間のように覚えるが,最初は広いと思った校地もすっかり整備され,今では狭くさえ感じるようになっている。その時から既に23年,本学は着実にその歴史を刻んできた。
 技学を標榜(ひょうぼう)し,社会に有用な技術者の養成を志す本学は,優れた構想と教職員の熱意によって独特のそして優れた教育システムを築き上げてきた。いまや長岡技術科学大学というブランドを誇れるようになったといって過言ではない,と自負している。卒業生の受ける評価も高い。先輩,現職の教官,職員の営々とした努力の賜物(たまもの)である。
 しかし,仏教はこの世のものは常に変化する,変わらざるものはない,と教える。このことは大学とてもちろん例外ではない。我々は創設以来果たしてきた役割をしっかりと確認し評価するとともに,常に時代に即して必要な改革と方向付けを心掛けていかねばならない。変化の測り難い昨今の社会情勢の下にあって,我々はいかなる事態にも対応できるように腕力を強くしておくことも必要である。
 我々長岡技術科学大学に課せられた責務は人づくりである。これは,これまでもこれからも変わらない。“ものをつくる”術(すべ)を知った高度な能力を有する技術者の養成である。この“ものをつくる”は単に工作を意味するだけではない。それがハードであれソフトであれ,作られた“もの”は人を豊かにするものでなければならない。“ものづくり”には経営的要素はもとより,その“もの”が自然や社会に与える影響・効果の予測と評価も含まれる。“ものづくり”の持つ意味は広い。我々がつくる人には実践的かつ実務的能力の涵養(かんよう)とともに社会人としての素養も不可欠である。
 人づくりは素材も目的も到達点も様々である。従って,これには規格化された一つの教育プログラムで良いわけではない。1年からの新入生,高専からの編入生が修士課程,博士課程を修了するまでにいろいろなプログラムが有って良い,と考えている。“以迂為直(迂(う)を以(も)って直(ちょく)と為(な)す)”,ゴールに至る道は直線ばかりでなくて良い。迂回した方が得るものが多いことも有り得る。広い視野の涵養(かんよう)には無用の用も欠かせない。
 学内の木々もしっかりと根付き,豊かな緑を茂らせるようになった。創設から25年,その蓄積をばねに,本学は次なる飛躍に挑むときである。教職員諸賢の叡智(えいち)を借りて,確かな方向を定めたいと願っている。