VOS,No.108


 追悼 [Back]

 故 桃井清至教授を偲んで
創造的,実践的技術科学者 桃井先生

 

山田 良平
(環境・建設系長)



 本学環境・建設系教授,桃井清至先生は,平成13年8月2日,肺炎のためお亡くなりになりました。前月に満61歳の誕生日を迎えられたばかりで,国立大学の独立法人化が目前に迫る今日,さらなる御活躍を期待しておりましただけに大変残念です。
 先生は昭和53年,開学直後の本学に建設系助教授として着任され,教育・研究体制の基礎づくりに貢献されるとともに,環境・建設系の系長を始め建設工学課程主任,同専攻主任,エネルギー・環境工学専攻主任,音響振動工学センター長,いくつかの学内委員会の委員長など,数多くの重要な役職を歴任され,本学の運営及び教育研究に尽力されました。
 御自身の研究においては,先生は環境衛生工学を専門領域とされ,廃棄物の溶融固化によるリサイクル技術の開発,膜分離法を用いる水処理システムに関する研究,高度浄水処理に関する研究,有機塩素化合物の微生物による分解除去に関する研究などに多大な成果を挙げられました。なかでも溶融固化によるリサイクル技術の開発は,社会的影響も大きく,専門外の人々にも広く知れわたり,本学の声価をも高めたと言えましょう。これらの成果に対しては環境工学研究フォーラム論文賞,発明協会発明奨励賞など5種類の賞が贈られています。
 学外では,先生は廃棄物学会理事,(財)下水道新技術推進機構「高品質溶融スラグ製造技術部会」部会長,(社)日本産業機械工業会「エコスラグ利用普及に関する調査研究会標準化準備委員会」委員長,(財)エンジニアリング振興協会「環境調和を考慮したごみ焼却残渣溶融スラグの建築構造材料への活用に関する調査研究」委員長等々を務められ,研究成果の社会における活用に大きく貢献されました。
 今や,先生の教えを受けた多数の有能な卒業生,修了生が教育,行政機関や業界で盛んに活躍しています。ここに先生の御冥福を心からお祈り申し上げます。


環境工学界の第一人者 桃井先生
小松 俊哉
(環境・建設系 助教授)


 8月2日午後7時15分,大花火大会の会場で桃井先生の訃報に接し,私は茫然とその場に立ち尽くしました。つい2週間前に入院中の先生をお見舞いした際には順調に回復している御様子に見受けられただけに,全く信じられませんでした。先生は入院中も今後の研究に並々ならぬ意欲を持ち続けられましたので,さぞかし無念だったと思います。
 先生は環境衛生工学の学問分野において我が国の第一人者のお一人でした。とりわけ廃棄物のリサイクル技術の分野では正にリーダーの役割を果たされてきました。廃棄物に関する研究は,他の環境分野の研究と比べて,研究の手がかりが掴みにくい領域なのですが,そうした中,先生は早くから廃棄物の溶融固化によるリサイクル技術に着目し,素晴らしい独創性と豊富な学識により多大なる成果を挙げられました。
 現在,廃棄物関連の環境問題の解決が急務であることは周知の通りです。先生は,研究者として常に先見性のあるテーマに取り組まれました。また学生には,工学的センスが身に付くように時間を惜しまず研究指導されました。学外では,数々の環境関連の委員会において委員長等を務められ,学術や社会の発展に貢献されました。さらに,自治体や企業からも環境施策や技術に関する指導相談を多数受け,工学の研究成果は積極的に社会に還元すべきとの御自身の信念から,その都度懇切にアドバイスされていました。特に7,8年前からは多忙を極め,徹夜で仕事をされることも頻繁にあったようです。しかし,先生は「大変だけど,今が追い風だから遣り甲斐がある」と言われていました。今となっては,無理をされたことが御病気の引き金になったのではと大変悔やまれますが,人一倍責任感の強い先生は常に最善を目指されていたのでしょう。
 8月2日,長岡の夜空に悲しい花火が舞い上がりました。桃井先生,どうぞ安らかにお眠りください。