VOS,No.108


 特集:ものづくりの魅力 [Back]

0 私のものづくり
設計とモノづくり

廣井  武
(機械系 シニアテクニカルアドバイザー)

筆者近影

 設計屋になって60年になりました。なぜこんなに続いたのかと,改めて考えてみました。一言で言えば設計が面白いということです。それはアイデアを創出する楽しみ,図面化する楽しみ,製品化モノづくりの楽しみがあるからです。そしてライバルに対する競争心と,知識欲をかきたててくれます。
 設計とは図面を奇麗に描くのが目的でなく,モノづくりに必要な情報(材料,加工,精度,表面処理,個数等)をもれなく記載することです。
 長い設計人生には,失敗もいくつかありました。ボンミスで組み立てられず変更したり,最終段階で要求精度が得られず,さらに剛性不足で納期遅れを生じ改造を余儀なく行い,関係部署に迷惑をかけたこともありました。「設計のミスはモノづくりの最終段階に向かうほど大きく表れる」ことを痛感しました。しかし失敗も後々の設計の反省材料となり,参考となります。闘志を燃やし再挑戦が必要です。
 長い間,工作機械を主に設計をしてきましたが,戦中戦後は欧米に追いつけと,模倣が多く,見本市等では負い目を感じましたが,それなりに得るものも多く,その後のオリジナルの開発設計に大いに役立ったことは否めません。アドバイザーとして担当する設計演習では,学生諸君にモノづくりを頭において,設計に興味がもてるよう,授業を進めていきたいと考えています。


重合の魅力

風間 武雄
(化学系 シニアテクニカルアドバイザー)

有機材料研究室にて

 ものづくりにはVOSの精神が大切だと思います。工学部の使命として社会に貢献することも一つです。私は,故藤本教授のもとで新商品を世に送り出すまでに先生のアイデアから10年かかった経験があります。商品化するには経費と時間がかかることを実感しました。アニオン重合の手法でモザイク荷電膜を調製したことです。研究室スタッフ,研究員,学生と一つの目標に向かって一致結束,ラボスケールで基礎実験結果を出し,ミニプラント(10kgのポリマー合成大型重合装置)で目的とするポリマー合成まで,スケールアップするとまたまた問題が出てきました。改良に改良をかさねて目的とする五元ブロック共重合体を合成し,物性評価,膜強度,四級化,モジュールの作製をしました。デザルトンの商品名で発売されました。商品化された時には感激いたしました。いまでも大切に持っております。また,苦労をかさねたレジスト材料の開発で(トリブロック共重合体)UV照射でエッジが鋭角に切れたパターンを見た時,その美しさに感動し,ものづくりの喜びを味わうことができました。これもまた商品化されました。アニオン重合法で単分散ポリマーが得られ,いろいろな機能性材料を合成することができます。新規高分子材料はおもわぬ物性が期待できます。VOSの精神習得に,ものづくりの楽しさ,苦しさを実感してみませんか。