VOS,No.109

 チャレンジ大学改革 [Back]

寄附講座「機械安全工学」について
田中 紘一
(機械系 教授)

 皆様は,この2年ほど,新聞などでISO9000とか14000とかいう言葉を目にしたと思います。あるいは実務訓練に行った企業先でこれらについて話題になったかもしれません。これらは国際規格で,前者は品質管理,後者は環境管理に関するものです。ところが,最近になって,我々機械系の学生に密接に関連する「機械の包括的な安全基準」に関する規格(ISO12100)が発効する動きがあります。これは機械製造者にリスクアセスメント(危険評価)と本質的な安全設計を求めています。この規格自体は機械安全設計の基準を定めているにすぎませんが,次の10年間で個々の機械,例えば工作機械,ロボットなどに対応した国際規格が発効し,その数は数千になるだろうと予想されます。このような情勢になったとき,日本では少なくとも2万人の認証技術者が必要であろうといわれています。製品が規格に適合していることの証明を認証と呼びますが,この作業には機械と規格に精通する必要があります。ところが日本ではこの技術者は皆無の状態でその早急な育成が求められています。
 そこで本学機械系修士課程で,(株)フォトニクスの援助を得て,平成13年9月より2年間の予定で寄附講座「機械安全工学」を開設しました。客員教授として日本信号(株)より蓬原弘一博士を招き「安全制御論」と「システム安全」を,ドイツ・ダルムシュタット工科大学からノイドルファ講師を招き「安全工学」と「人間工学と設計」を講義してもらうことになりました。二人は日本とドイツを代表する機械安全工学の第一人者です。
 なお,機械系では,この寄附講座を核として,平成14年4月より,社会人のキャリアアップを目的とした「機械安全コース」(機械システム工学専攻)を開設します。


Safety Machine Engineering at Nagaoka University of Technology
長岡技術科学大学での機械安全工学
アルフレッド・ノイドルファー
(客員教授)

In the recent movement of global standardisation for safety management systems and of requirements from the EC-Countries for safety supply of machinery the Japanese industry strongly demands professionally educated safety engineers,not only for management into Japanese companies but also for manufacturer with export of products.For example:Any product that comes under an European Directive and is to placed on the market in the EU must bear CE marking.CE means a conformity with the minimum requirements on safety.This can be self-certified by the manufacturer,but he takes responsibility for correct application of all directives and safety standards.And this needs knowledge and know-how.Nagaoka University of Technology has determined to develop the education of safety engineering.
That's the reason,why I give since the September 1,2001,as a visiting professor a series of lectures on “Safety machine engineering ”against master students in the mechanical engineering department for one year.
I give this lectures in English.To make easier for the student to understand the matter,I have develop an interactive lecture on the base of moderation-methods,supported with transparencies and video tapes.
I will give the students approaches to the development of safety machines.First of all they must learn to recognize and identify hazard points,hazard places and dangerous situations at machines with the help of concrete examples with photographs.After that they learn how to estimate and assess risks on this situations.
The next step is to learn how to use methods of direct and indirect safety technology,how to design safety guards, protective barriers,distance guards,sensitive safety devices and how to use safety standards,safety information and aspects of geometry,energy and information in ergonomic design rounds of and complete the lecture.
Further I will develop a period of practical instruction,because safety engineering is not only a question of theory and an explanation of real systems is a precondition for the application-oriented lectures and exercises.My duties will then supervise the research work of some master course students on the safety design of machines and leading young researchers to develop investigations in this new field of research too.So let's start to develop it now!

   安全管理システムに関する国際標準化及び産業機械の安全性に対するEC各国の要請という近年の動向を受け,日本の産業界は専門教育を受けた安全技術者の確保を切望しています。それも企業に対する安全管理についてだけでなく,輸出製品を抱えるメーカーとしての安全管理についてです。例えば,欧州での指導を受けEU市場に出回る製品はいずれもCEマークをつけなければなりません。CEというのは製品が安全性に対して最低基準を満たしていることを意味しています。これは製造者自身で認証可能ですが,製造側がすべての面で正しい運用と安全基準についての責任を持たなくてはなりません。そして,これには知識とノウハウが必要となります。今年,長岡技術科学大学では機械安全工学についての教育カリキュラムを設定することを決めました。
 これらの背景のもとに,私は平成13年9月1日より客員教授として招かれ,一年間,機械系の修士課程の学生向けに“Safety machine engineering ”の一連の講義を担当しています。
 講義は英語で行っていますが,学生が講義内容を理解しやすいよう,OHPやビデオを活用し,インタラクティブな講義づくりを心がけています。
 学生には安全な機械の開発に対するアプローチを教授するつもりでおります。まず写真による具体例を通し,機械における危険源,危険箇所,危険状態の見通し方や特定の方法を学習してもらい,その後,リスクをどのように見積り,評価するかを学んでもらいます。
 次のステップでは直接的または間接的な安全技術手法の用い方,安全柵,保護壁,安全距離,センサーの設計方法,安全基準の運用について学習してもらい,安全情報と幾何学的形状,エネルギー,人間工学的設計について触れ,この講義を完結します。
 さらに私は実際的指導も行っていくつもりです。安全工学とは理論での問題だけでなく,実際の議論は前提条件を与えた対象物と照らし合わせた講義や演習で成立するからです。
 それから,私の仕事は安全設計についての修士学生を研究指導して,若い研究者が新しい研究分野において研究を促進させるために導いていくことにあると考えています。
 さあ,では今から始めることとしよう!