VOS,No.109

 特集/これからの産学連携 [Back]

0 これからの産学連携の展望
産学連携プロジェクトについて
小島  陽
(学長補佐・機械系 教授)

1.はじめに
 「これからの産学連携の展望」というテーマで執筆依頼を受けた。今まで著者が係わった産学連携の経験を紹介して,若干の将来展望を述べる。
 著者はマグネシウム研究を30年ほど前から行なってきたが,近年の携帯電話,ノートパソコンなど電子機器類の筐体(きょうたい)(ケーシング)の素材,自動車の軽量化のための素材として,マグネシウム合金が急にこれだけ脚光を浴びるとは予想しなかった。21世紀になり,地球温暖化防止,環境保全,資源の有効利用を含めて循環社会の構築が国の政策となり,軽量金属材料の見直しが行なわれている。欧米では,コストを度外視してでも,自動車の燃費向上のためにマグネシウム合金を使い自動車の軽量化が行なわれている。我国では,コスト意識があまりにも強くマグネシウム合金の自動車への応用が躊躇されていた。しかし,欧米,特にドイツでは,目指すべき社会の姿として,市販車のトランスミッションケースなどの大型部材にマグネシウム合金をすでに採用している。我国の自動車メーカのマグネシウム合金の取り組みは5年以上遅れてしまった。ようやく,我国においても,以下に紹介するような学術研究の「特定領域研究」,企業化を目的とする経済産業省の「地域コンソーシアム」,新潟県工業技術総合研究所を中心とした各プロジェクトが平成11年度に同時に動き始めた。

2.産学連携と科研費
 平成11年度から3年間の期間で年間予算約8,000万円で,経済産業省の「地域コンソーシアム」を行なっている。大学のシーズをもとに企業と連携して,企業化を図ることが目的である。「自動車用鋳鍛工部品用マグネシウム合金の開発及びその加工技術開発研究」(研究代表者:小島 陽,管理法人:レーザ応用工学研究所)というテーマで,著者らの開発したマグネシウム合金で,自動車のトランスミッションケース(ダイカスト),ナックルアーム(鍛造)を実用化する開発研究をダイカスト,鍛造加工,機械加工,表面処理の各メーカを入れて行なっている。この「地域コンソーシアム」は平成11年には,全国で4件採択されたが,倍率は6.8倍と厳しい競合であった。数度のヒアリングを受け採択された。毎年成果報告書を作成し,昨年末には,中間評価を受け,コンソーシアムの継続が許可された。プロジェクト終了後の事業化プランの提示も要求され,特許取得を含め,事業化へのスケジュールを厳しく要求されている。
 また,新潟県工業技術総合研究所を中心に,新潟県戦略技術開発研究プロジェクトとして,「マグネシウム合金による複雑形状部品の加工技術の確立と用途開発」というテーマで,平成11年度より3年間で,新潟県の特質を活かした,マグネシウム合金のプレス成形加工技術の確立と新しい産業の創製を目的に開発研究を行なっている。
 一方,同じ平成11年度には,文部省科学研究費の特定領域研究(B)でも「高性能マグネシウムの新展開─21世紀の超軽量金属材料─」(研究代表者:小島 陽)が4年間,約6億円で,10大学,2国研などの研究者による基礎・応用を含めた学術的研究が開始した。研究成果は,国際ワークショップ,国際会議等で公表されている。平成12年7月には,長岡で海外からの招待者を含めて「Magnesium Alloys 2000」ワークショップを,また平成13年9月には,マグネシウム産業の進境著しい台湾との二国間ワークショップを開催した。また,平成14年1月にはオーストラリアとのジョイント・ワークショップ,平成15年1月には,本研究の最終成果報告会として大阪で完全にオープンな形式での国際会議を予定している。科研費と地域コンソーシアムなどでは明らかに,目的が異なるので,しっかり研究内容の棲み分けが必要である。

3.おわりに
 ようやく,我が国でも,産官学が連携して,マグネシウム合金の開発研究に本腰を入れ始めた。遅きに失する感がある。技術立国として生きる我が国は,大学のシーズを活かすプロジェクトの推進が必要不可欠である。幸い,「地域コンソーシアム」についても,本年度も,13年度補正予算(一般枠:65億円,中小企業枠:45億円)と14年度本予算(一般枠:68億円,中小企業枠:20億円)の申請受け付け(13年度補正:現在受付中,14年度本予算:4月上旬以降)が行なわれるので,産学連携を標榜する本学としては,多くの教官が関心を示し,申請されることを希望する。