VOS,No.109

 特集/これからの産学連携 [Back]

0 リエゾン担当教官より
日本の最後の切り札産学連携
小田原 勝夫
(リエゾン担当 客員教授)

 【興隆する中国!追い込まれる日本!包囲される大学!】,原稿を依頼された時に頭に浮かんだイメージです。産業界や産学連携の仕事に携わっておられる方々は多分大多数の方が同じ思いなのではないでしょうか。一昔前,東アジア経済圏は【雁行型経済へ】と言われたものです。雁の飛んでいる矢の形になぞらえて矢じりの先端を飛んでいるのが日本で,次にNIES諸国,ASEAN諸国,中国と続く姿がイメージされていたものですが,今やそのような事を言うような人は一人もいなくなりました。それどころか情報通信革命に乗り遅れ,“置いてきぼりを食う日本”といったイメージにすりかわってしまいました。経済成長率はマイナスになり,大手電機会社は軒並み空前の赤字に陥り,失業率は5%を越え,中国への生産展開は加速され,産業の空洞化は簡単には止まりそうにありません。アルビン・トフラーが「第三の波」で近未来,農業革命,産業革命に続き第三の波として情報革命が起きると書いたのは20年位前でしょうか,その頃工業化時代の雄であった日本がこれほどまでに苦しむことになろうとは思いもしなかったことです。最大の強さが外部環境の変化により最大の弱みになってしまった典型的な例に見えます。日本の高度経済成長は人類始まって以来の驚嘆すべきことで「ライジング・サン」と称賛されました。これは大量生産に向く日本のしくみがあったからこそ出来たことで,なんとそのしくみは戦争中の国家総動員令によってできあがったものだと言っている人がいます。情報化はベルリンの壁を破り,先進工業社会に従来比6倍の人達を参入させたと言われます。そこに繰り広げられるグローバルコンペティションは従来の競争とは全く様相を異にするものになりました。トフラーは「パワーシフト」の中でパワーには暴力,金力,情報力の3種類があり,後者になるほど質の高いパワーになるといっています。そして“知識社会,知識経済へ”といわれるようになりました。経営資源の中で知識こそが最も重要な資源であるというわけです。
 さて,産学連携とは異質な別な世界にあった産業界の実業力と,知の拠点である大学の知識・知恵力とを新しい知識社会に向かって組み合わせ,新たな活力ある産業を生み出そうということなのだと思います。異質の組み合わせだからこそ革新が次々と生まれることになるのではないでしょうか。リエゾンの意味は“連絡を担当する人”というフランス語だそうですが,この産と学の働きを結びつける役目だと心得ています。しかし,自ずから産と学の存在理由は異なるのですから強引に結び付けようとしたところでうまい具合に結び付けられるとも思えません。産学相互にwin-winの関係を作るには,“人間の感じ方”(暗黙知)も含めて相互に信頼しあえるコミュニケーションの場をつくり,産学の接触面積を広げ,その場から“3人寄れば文殊の知恵”的対話の土壌作りが大切です。成長した意義ある“交流フェア”,専門分野別“研究交流会”,で産官学の交流の場をつくり,技術支援センターの発足により力強く起業,起業家(Innovator)を支援する,という具合に取り組んで行きたいと話し合っています。新潟県,長岡市,信濃川テクノポリス開発機構,商工会議所等との定期的ミーティングも始まりました。今年こそ実のある長岡技大の産学連携に前進させたいものだと思っています。