VOS,No.109

 特集/これからの産学連携 [Back]

0 機械系の産学連携
これからの産学連携
石ア 幸三
(機械系 教授)

 機械工学は全産業との関係が深く,産学連携に関して工学全般を述べた方が実質上の機械の産学連携を表しているので,日本の工学全般から見た産学連携がどうあるべきかを述べることにする。
 産業収益は,(付加価値:a)×(生産費の低減:c)×(売上量増加:m)の三要素から成り,商品の熟成度により異なった要素に重きを置いている。新しい製品はa型の収益を得,熟成するにつれc型そしてm型に移行する。一般的に日本の産業は今まで「量産と品質管理」を特徴として,要素cとmが利益要素の中心であった。技術収支は負,つまり,海外で熟成した(c,m型)商品を技術料を払って国内で生産し収益を上げてきた。それに適した「問題解決能力」の高い人材を多量に大学が供給してきたことにより,今までの産学連携は成功したと言える。しかし成熟したc,m型商品では国内生産業の空洞化が起きている。
 日本の産業はc,m型から「高付加価値製品」(a型)産業に変化し,技術収支も黒字になりつつある。つまり今後の産業界は大学に対して「問題発見能力」を身につけた人材,そして世界に先駆けた技術開発を可能にするための研究に期待している。このような人材育成と研究がこれからの産学連携の土台となるべきである。しかし,一般的に産学連携に関して誤解と間違った先入観で話が進んでいる。産業界からの「問題解決依頼」だけを産学連携の目標にすべきではない。「問題解決」だけが目標では大学の隷属的な産学連携になり,産業と大学の共倒れにもなりかねない。しかし,日本の大学も産業界もまっしぐらにこの方向に向かうことが産学連携と考えている人が多くて気味が悪い。「問題発見型人材」育成とそのための「問題発見型研究」を基とし,大学と産業界がお互いに対等に貢献し合ってこそ産学連携が可能となる。大学の繁栄なくして産業界の繁栄はないし,産業界の繁栄なくして大学の繁栄もない。直近の出来事で忙しい産業界のために,明日のことは大学人が考えて日本の将来像を描き産学連携を具現化していくべきであろう。これが我々の考えるこれからの産学連携のあるべき姿である。

0 電気系の産学連携
電気系の産学連携
野口 敏彦
(電気系 助教授)

インバータエアコンのコンプレッサ駆動システムに関する受託研究風景
 産学連携の主要なスキームとして,産業界からの受託研究のほか,民間企業等との共同研究や技術開発センタープロジェクトが挙げられます。
 平成13年度には,受託研究として3件,共同研究として1件,技術開発センタープロジェクトとして5件の案件が挙げられており,それらの研究内容はエネルギー分野から電子・光波デバイス分野,情報通信分野まで多岐にわたっています。特に受託研究では,エアコン等家電機器のモータ駆動システムに関する研究や,ネットワーク特性評価並びに信号の符号化・復号化といった情報通信に関する研究が精力的に行われています。また,民間企業等との共同研究においては,光ディスク記録装置の制御方式に関する研究が実施されています。一方,技術開発センターのプロジェクトは電子デバイス関連の案件を中心に多様な展開が見られ,水素ガスセンサや高温超伝導体のホットスポット現象利用素子等に関する研究が産学一体となって推進されています。
 本稿では紙面の都合上,3つのスキームに限定して電気系の産学連携状況を概説しました。しかし,これらは電気系の活動を陽に代表するものであっても,網羅的に物語るものではありません。実際には民間からの奨学寄付金や学生の実務訓練等を通じて,多くの教官が個別に緊密な連携をとっており,産学連携の裾野はますます大きく広がっています。

0 化学系の産学連携
トータルセラミックスライティングテクノロジー
斎藤 秀俊
(化学系 助教授)

【TCLT】セラミックス技術が最先端発光技術を発展させようとしています。Total Ceramics Lighting Technology(TCLT)とは,セラミックスを利用した平面発光体の総合技術で,本学化学系斎藤研究室が提唱する光・電子セラミックスの研究概念です。平面発光体に必要な発光材料や電子源などがすべてセラミックスで構成されます。

【地域産業の創出】大学の研究は,地域産業創出および国や人類の基盤科学技術創出を目標とします。例えばセラミックスコーティングを新潟県の基盤技術として育てるために,新エネルギー・産業技術総合開発機構の地域コンソーシアム事業が本研究室を中心に平成13年度から3ヵ年計画で進行中です。地元企業三社を含む産学の緊密な連携により,セラミックス膜で構成されるプラズマディスプレイパネル(PDP)の画素を設計・開発します。

【そしてTCLTプロジェクトへ】
一方,セラミックスウイスカー(ひげ結晶)からなる高性能電子源の基礎研究を本学化学系伊藤研究室と進めています。研究成果であるウイスカー電子源で図1 のような電界放射型ディスプレイ(FED)を構成すると,消費電力が8W/m2程度になります。42インチPDPの消費電力が300W弱なので,FEDは極めて有望な技術といえます。この技術をしかるべきプロジェクトで発展させ,将来地域コンソーシアム事業の成果と融合し,国の産業基盤にふさわしい技術を創出する計画です。それがTCLTプロジェクトです。


定常状態 過電流状態
赤色ハート型電界放射ディスプレイ。

0 環境・建設系の産学連携
環境材料の開発
松下 和正
(環境・建設系 教授)

 環境問題に関する研究分野は非常に広い範囲にわたっているが,環境調和は決して昔の生活に戻ることではなく,科学と技術の発展により,より快適で環境負荷の少ない社会を構築することである。
 先端科学技術は種々の機能性物質を扱っており,埋蔵量の非常に少ない物質や,廃棄物として人間,生物環境に放出されると有害な物質を使うことが多い。これらの物質を使わずに先端科学技術を推し進めることが非常に重要である。先端技術に欠くことができずしかも有害と見なされている物質の代表例に鉛および鉛化合物がある。金属鉛,酸化鉛,有機金属鉛などそれぞれの形態で化学反応性や有害の程度は著しく異なる。これを原子として一律に規制するのはある意味で無理なことではある。しかし世の中の動きから考えると,もはや使用規制は動かせないことである。
 エレクトロニクスデバイスには鉛が非常に多く使われている。例えば電気回路には電気をよく通す鉛─ビスマス2成分金属合金がはんだとして使われている。金属鉛を使わない新しいはんだの研究も行われている。また種々のデバイス接合に電気を通さない低融点ガラスが使われている。例えばブラウン管ガラスはいくつかのガラス部品を低融点ガラス接合して組み立てられている。また最近発展しているプラズマディスプレイパネルの小さなプラズマセルの壁をつくるためには低融点ガラスが欠かせない。従来低融点ガラスは酸化鉛が主成分であった。酸化鉛をまったく使わない新しい低融点ガラスを合成するのが我々のプロジェクトである。そのため現在のところ環境不可の小さい酸化銅─燐酸を主成分としており,特許も申請している。
 これら新製品の開発により,将来,エレクトロニクスを始めとする種々の分野で鉛および鉛化合物を全く使う必要がなくなることを目指している。

0 生物系の産学連携
生物系の産学連携「きのこ技術研究会」
宮内 信之助
(生物系 教授)

きのこ菌を用いた土壌浄化装置
 生物系宮内研究室では産学連携として,1995年5月,きのこ菌の工業的利用による商品開発を目的としてきのこ技術研究会を発足させました。当初参加した企業36社,現在の参加企業は個人企業を含め20社です。今年で7年間の産学連携事業を実施しました。当初大学で開発した技術を企業化していく方向でしたが,研究会を進めていく中で,シーズが企業側にもあることが分かりましたので,それを堀りおこして商品化することも併せて進めました。ヒメマツタケ,特殊栽培シイタケ,ハナビラタケなどがきのこ技術研究会内の企業で商品化されています。また,栽培が難しい菌根生のきのこについても,新しい栽培技術が生み出されました。また,特殊なきのこ菌が重金属を多量に吸収する性質を持つことが分かりましたので,それを利用して,砒素を吸収処理する土壌浄化システムを,企業と共同開発しました(写真−1)。一方,本学と独立行政法人産総研,九産大,福岡女子大との共同研究からきのこ菌由来の色素の大量抽出方法技術が確立されました。その中でロクショウグサレキン由来の色素は特異な生理活性を示し注目されています。
 1997年,東京ドームで開催された新潟食の祭典では,きのこ技術研究会として1つのブースを設け,研究会内で開発された商品を販売しました。その際,本学学生も販売に協力しました。現在,7年間の研究の集大成の発刊に努力しています。

0 経営情報系の産学連携
Web Census 2001
鈴木  泉
(経営情報系 助手)

数少ないチベット語サイトの1つ
 経営情報系に特色のある産学連携の実例として,私と,同じく経営情報系の三上先生とが共に進めているプロジェクトについて御紹介します。
 このプロジェクトは,世界中のWebサイトにアクセスし,どのような言語及び文字コード系を用いたWebページがどれだけの数あるかを調査するものです。アジアの多くの言語・文字については,これらをコンピュータで処理するための「文字コード系」が何十種類,中には何百種類とある場合が珍しくありません。
 メールのやり取りやWeb ページの表示が非常に不便であることはもちろん,このことが,自国語の使用を止め,英語によるウェブサイトを増加させる原因となっており,英語を使う人とそうでない人との間で生ずる情報格差が問題となっております。その実態調査を行うことが本プロジェクトの主な目的です。
 そのために必要な言語・文字コード系の判別技術を本学で開発し,また世界中のWebサイトにアクセスするためのWebクローラを,そうした技術に強いベンチャー企業に依頼することで,第1回の調査をまもなく実施するという段取りまでこぎつけました。
 第1回の調査結果は今年2002年の5月頃発表する予定です。詳しくは, http://mlcr.nagaokaut.ac.jp/clse/をご覧下さい。