VOS,No.112

 私の抱負 [Back]

ベテラン新人の弁
嶋 田 英 輔
(経営情報系 教授)
 教授会の席上新任挨拶で,「若輩者と言うには年を取りすぎておりますが...」と申し上げました。
 しかし心の中は,若者に自分の従来からの想いをぶつけられると言う,非常に高揚した気分で一杯でした。一年生になったつもり..という気持ちに偽りは有りません。
 今まで企業を経営していて,今の若者があまりにも指示待ちの姿勢になって居り,「大学で教わっていなかったから、出来ません!」と平気で抗弁し,直属上司が困っている様を垣間見て,よーし,それじゃ大学で教えてやろうじゃないか!という気持ちを持っていたときの教授就任のお話だったのです。
 しかし自分の経験は,まったく学的ではなく,研究に従事するにしては,余りにも非論理的な思考形態の上に出来上がっていました。
 しかし実学を大事にする当学の伝統なら,経験を披瀝するには最適ではないかと考えています。
 果たせるかな学生たちは,今まで経験したことのない講義のやり方に面食らったようです。話を聴かなければ何も分からないやり方は,ノートの貸し借りで単位を取ることだけが目的の学生にはきっとつらいことでしょう。テキストもその日の分を作成しては使用しています。しかし,実業界が大学に求めるものを,学生に知って頂く為にもこのスタイルを続けようと思って居ります。
智慧(ちえ)の結集を目指して
湯 川 高 志
(電気系 助教授)
 私は本学修士課程修了後,民間企業で研究開発に携わってきました。15年ぶりの母校は,建物も増えて教育・研究体制も充実し,大いに発展していると感じています。私も,更なる発展のため微力ながらも尽くしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 私の専門である知識処理は,人間が行っている知識に対する理解,推論,発見等をコンピュータにより代行したり支援する技術です。ところで,知識は人間が創り出したものであり,物理法則に従うものではありません。したがって実験の外挿性が低く,小規模な実験ではうまく動作する方式が,実際に利用すると期待通りに動かない事も少なくありません。このため,実働システムの構築と実環境における評価が必要とされます。在学中に本学の理念である実践的技術開発について学んだ事が,この分野の研究を進める上で,大変に役に立ったと思っています。これからも,学術的な貢献はもちろんのこと,世の中で広く使われ社会にインパクトを与えるような実践的な技術を研究したいと考えています。
 インタネットとWWWの普及により,これまでに経験したことがないほどの膨大な量の情報や知識が蓄積され流通するようになりました。これらを集積・処理して人類の智慧をより高めることを可能とするような技術の創出を目指したいと思います。
トリレンマの克服に向けて
梅 田   実
(化学系 助教授)
 最近,トリレンマという言葉をよく耳にします。二律背反・ジレンマの三者版を表す造語らしいのですが,昨今の環境問題を受けて,「エネルギー」と「経済」と「環境」が同時に発展すること(スパイラルアップ)が無いことに特定して使用されるようです。
 環境負荷の少ないエネルギー源として燃料電池が見直され,トリレンマ克服の切り札として活発な研究開発が繰り広げられています。燃料電池は一部で既に実用化されていますが,これが民生用とりわけ個人用途に対して本物になるかどうかは,実業界と大学をはじめとする研究機関双方の努力が今後一層求められるところです。
 10数年勤めた会社から大学教官に身を転じたのが2年と少々前です。その時点では「教育」と「研究」に注力すればよいものと思っていました。前の大学で,企業経験を買われてか産学連携に関する仕事をさせてもらい,これからの大学が社会に果たす役割を大きくシフトさせつつあることを体感しました。まさにこれは,私にとっての「三番目」の課題であり,どうやら避けて通ることはかなわないと確信するに至りました。
 電気化学エネルギー変換は,研究を滑り出したときからの私のテーマであり,燃料電池はその一方法論です。一つのツールで,二つのトリレンマに当たることができるか分かりませんが,さまざまな思い入れを持って微力を尽くす所存であります。
技科大と高専との連携
川 本   昂
(技術開発センター 助教授)
 私はこの4月に福井高専から技術開発センターに着任いたしました。本学は独立行政法人化への対応策として高専との連携強化を打ち出しています。一方の高専を取り巻く状況は,大きく変わりつつあります。高学歴化,学習指導要領の改訂,中高一貫教育の推進,技術の高度化,経済不況,独立行政法人化の動きの中で,進路が多様化し,求人や入試の状況も変わってきました。また,専攻科の設置に伴い,進学希望者が大幅に増えています。しかしながら,本学への編入生の応募は低迷しています。また,高専とカリキュラム上の整合性,連続性がよくない多くの大学では,編入生は1年目の授業に退屈する傾向がありますが,本学の場合,そうした問題がないようです。今後,こうした実情を把握し,技科大と高専との連携の意味,技科大から見た高専教育の課題,特に人を育てるシステムについて考察してみたいと思っています。
 私はこれまで有機電気電子材料,有機電子デバイスの研究に従事してきました。共同研究先である電気系の高田研究室は酸化物をはじめとする各種無機化合物の固体表面や界面での物理的化学的作用に着目した機能性材料や素子の開発を行っています。有機と無機という異質の組み合わせによりそれら界面の性質を利用した新規ナノデバイス,選択性を有するセンサの開発ができればと考えています。