VOS,No.113

 チャレンジ 大学改革 [Back]

起業への挑戦
私の会社づくり
時 田 修 二 (材料工学専攻5年 斎藤秀俊研究室)
大気開放型CVD装置の前で(筆者は右)

 私は,本年5月に時田シーブイディーシステムズ株式会社を設立いたしました。事業は,大気開放型化学気相析出(CVD)装置の開発・販売及び同装置を用いた酸化物膜コーティングの二事業を行います。弊社は,長岡技術科学大学テクノインキュベーションセンター(センター長小島先生)より第一号の認定を受けた大学発ベンチャー企業です。
 私は,以前燕市の恒成株式会社(ステンレス卸業)に勤務しているときに,機会があって長岡技術科学大学に社会人入学(平成12年度)いたしました。受け入れ先は,化学系斎藤先生の研究室です。社内には十分な設備がないため,入学してから現在も大学で大気開放型CVD装置及びコーティング技術の研究をさせていただいております。その間,国・県の研究費をいただきながら大型装置の試作なども進めてきました。昨年(2年目)になってもっと自分の意見が反映し,仕事を評価するような組織を作り事業を進めるべきであると考え会社と協議の末,独立することにしました。
 会社を創るにあたって山岸則彦君(技術開発センタープロジェクト研究員)に協力(共同経営者)をお願いし,二人で事業をはじめることにしました。斎藤先生をはじめ多くの方々のご援助で株式会社として設立することができました。会社を退職し,設立準備を始めた頃は,まさに大海に小船で乗り出した感じで心細いときもありました。しかし,チャンスをタイミングよく活かせば何とかなるもので,産学官連携京都会議・大気開放型CVD研究会で宣伝する機会を与えていただいたり,支払い条件を弊社の資金繰りに合わせてもらったり,元職場の仕事(顧客)を引き継ぐなど順調な滑り出しになりました。営業においては大学発ベンチャー企業であることにより顧客から思っていた以上に信用を得て,取引に繋がることが多々ありました。私は,事業を始める決断ができて良かったと思っています。逆に起業を目指している人達が心配しなければならないのは,好機が来ても行動せずみすみす成功するチャンスを逃すことではないかと考えます。
 弊社は,3年計画で毎年見直しを行いながら事業を進めていくことにしています。本年も株主総会で事業計画の承認を受けました。事業計画を実施するために今期は,持っている技術を早急に収益に結び付けること。来期以降は,人材と資金及び生産拠点確保が必要と予想されます。私は,お世話になっている会社社長から技術をお金に換えるのが下手と言われたことがあります。収益を上げることが企業の社会への貢献であるとすれば研究成果を収益に結び付けられないベンチャー企業は,いくら優れた特許などを所有していても長くは存在できないと思います。教育や研究用設備を持つ大学が,商売をしようとするベンチャー企業にどこまで協力していただけるか産学官連携と言われながら難しい点もあります。私(弊社)は,斎藤先生からご指導・実験スペース・評価装置など最大限のご協力をいただいています。これから学内で起業しようとする方々にも大学からさまざまな援助が提供されればよいと思います。さらに,長岡技術科学大学に対して,テクノインキュベーションセンターの充実を図っていただき,ビジネスプラン作成・創業の繁雑な手続き・資金繰り・財務知識(決算書がわかる)などを積極的に支援する組織作りを期待します。
JABEE
建設工学課程のJABEEへの取り組み
福 嶋 祐 介 (環境・建設系 教授)

 建設工学課程では昨年度,JABEEの試行審査を受けた。JABEEといっても初めて聞く人も多いであろう。JABEEとは日本技術者教育認定制度(Japan Accreditation Board for Engineering Education)の省略名である。この認定制度は大学レベルにおける技術者教育の質を保証し,ワシントン・アコード等の技術者教育の国際的承認協定に対処するために発足した。現在,大学における高等教育の品質評価,認定を行うさまざまな外部評価の動きがある。JABEEはそのうち,大学学部における技術者教育プログラムの水準を認定し,保証する制度である。
 高専の専攻科も大学レベルの教育を行っており,JABEEの対象に含まれている。このため,長岡・豊橋の両技大を始め,全国の高等専門学校では一般大学と同様,JABEEに対してどう取り組むかが大きな関心事になっている。
 JABEEの認定制度は始まったばかりであり,準備の意味もあって,2000年度,初めて“試行”審査が始まった。土木学会関連では2000年度の鳥取大学,近畿大学に続き,2001年度は1高専を含めた7校が試行審査の対象となった。本学建設工学課程はその一つである。
 JABEEでは広く,各分野の技術者教育プログラムを認定の対象とする。このため,実際の審査にあたるのは土木学会,日本機械学会といった個別の学協会である。また,技術者教育認定といった性格から,認定審査には民間企業などで経験をつんだ技術者も審査にあたる。
 JABEE審査ではプログラムの水準を確認するために,教育プログラムが多岐にわたって審査される。「学習・教育目標の設定と公開」「学習・教育の量」「教育手段」「教育環境」「学習・教育目標達成度の評価」「教育改善」「分野別要件」などの項目が並ぶ。とりわけ,教育プログラムが継続的に改善されることを強く要求している。大学におけるカリキュラムは常に改善されるべきものであり,JABEEの趣旨は大学における教育のあり方と合致する。我々は,建設工学課程のカリキュラムの問題点を洗い出し,それを改善することを目標に掲げて,JABEE審査の準備を行い,昨年11月19日,20日に実地審査を受けた。
 全体として,建設工学課程の教育プログラムは高く評価されたが,以下のような不十分な点も指摘された。シラバスでわかりにくいものがある。講義室,実験室などの環境に不十分なものがある。教育改善を学生にフィードバックするシステムはあるか,1学期15週の授業の保証はあるか,などである。今,全学を挙げてこれらを改善する努力が始まっている。試行審査後も建設工学課程では教育改善のための継続的な活動を続け,来年度での本審査のための準備を進めているところである。本学では第3年次に8割程度の高専の卒業生を編入させているので,審査員に対して編入学生の学力をどのように証明し,納得してもらうかなど,他大学にはない苦労もある。
 膨大な資料を整備し,我々の教育プログラムの長所をアピールするのは大変な作業ではあるが,わが大学を宣伝するよい機会だと捉えている。JABEEに認定された教育プログラムの修了生は,就職等で有利になることが予想されるなど,直接的なメリットもあるだろう。これからの建設工学課程のJABEEへの動きに注目してもらいたい。