VOS,No.117

 実務訓練 [Back]

実務訓練の評価とさらなる展開
小 松 高 行
(実務訓練委員会委員長,化学系 教授)


 本学は,学部から大学院修士課程までの一貫教育,実務訓練制度の導入,産学共同研究の推進を教育・研究の柱にして1976年新構想大学として開学した。これらの構想の輝きは27年たったいまも失われてはいない。実務訓練は1979年の開始以来,<技学>―技術科学―に関する創造的能力の啓発に中心的役割を果しながら,今年で25年目という節目を迎えている。世の中の激しい動きの中で,実務訓練制度を維持し,成果を着実に挙げ続けてきたという事実は,実務訓練がいかに重要で,かつ有効な教育プログラムであるかを証明している。同時に,25年間にわたりほぼ同じ内容で行ってきたということも事実であり,産業界や大学自身が大きく変わっていく時代にあってこの制度の理念をいかしながらさらなる展開を図る必要性も大きくなってきている。
 平成15年度の実務訓練シンポジウムは「実務訓練の変遷 〜過去・現在・未来〜」(6月11日)というテーマで,本学を修了し,社会の第一線で活躍されている方々をパネリストに迎えて行った。その中には,第1回目の実務訓練を経験された方が2名含まれていた。実際の現場に自分をおいて見ることの重要さ,いろんな視点をもつことの必要さ,コミュニケーションの重要さ,積極的な姿勢の重要さ,学問の重要さ,などを実務訓練を通して感じあるいは学び,その後の社会での活躍に大きな財産になっていることを異口同音に述べられた。修士課程への準備教育という視点を大きく超えた価値が実務訓練には存在している。
 本学の自己評価の一つとして,本学の大学院修士課程を修了し,実社会で活躍している者に対して様々はアンケートを実施しているが,常に80%以上の修了生が企業等に就職した後でも,実務訓練の有効性・有用性について高い評価を与えている。また,昨年度行われた大学評価・学位授与機構による工学系教育評価では,本学の実務訓練は教育内容面での取り組みや教育の達成状況という項目で非常に高く評価されている。
 実務訓練委員会では,昨年度,服部学長から,経営情報システム工学課程の実務訓練への参入や実務訓練の実施時期などこれからの実務訓練のあり方について諮問を受けた。幸いに経営情報系教官の努力により,実務訓練受入先機関の確保に目途がつき,経営情報システム工学課程も実務訓練を実施することになった。また,学部4年で実施している現行の実務訓練を継続しながら,大学院での実践教育の取り入れを検討することを答申した。特に,実習期間,必修・選択の区別,単位数等について各専攻の独自性が発揮されるシステムの導入の必要性を答申した。さらに,実務訓練経験のない他大学出身の大学院生に夏休み等を利用した企業実習を単位認定の形で実施すべきことも答申した。
今年度の実務訓練シンポジウムの様子
 海外での実務訓練に対する学生の希望はかなり高く,昨年度は33名が派遣されている。派遣先の開拓等さらに努力する必要がある。なお,実務訓練に関する英語版のパンフレットは今年度中に作成することにしている。
 今年度実務訓練に行く学生諸君には,安全に気をつけると共に,長岡技科大の学生として大いに力を発揮し,一層たくましくなって戻ってくることを期待している。

実務訓練を履修して
責任感,自信,そして将来の希望
牛   艶 玲
(建設工学専攻1年)

 私は去年の10月から今年3月にかけて,横浜にある会社で実務訓練をしました。実務訓練のテーマはGIS(地理情報システム)です。一日中ずっとPCを使って作業をするため,慣れるまではとても疲れましたが,慣れてくるとだんだん簡単に感じるようになり,自信がつきました。
 会社では,社員は一つの部屋で一緒に仕事をしますから,怠ける人もなく作業効率がいいと感じました。中国企業はこの点を取り入れた方がいいと思います。中国道路補修の技術基準の専門書を訳すとき,正確に訳して伝えたいと思うようになり,自分が任されている仕事の責任者は自分なのだと自覚しました。会社での仕事は全てがチームワークですから,もし私の仕事に問題があると,他の仕事にも悪い影響を及ぼします。私は以前よりも強く責任感を持つようになりました。中国企業との会議にも参加しました。 企業間の技術提携の方法や,GISの実用性がさらに理解できました。国際学会にも2回参加し,展示コーナーや講演,発表会から,GISの世界の面白さを知りました。自分もいつかこの世界に入りたいという将来の希望を持ちました。
後列中央が本人
 実務訓練の5か月間,仕事の責任感,人間関係の重要性,会社や社会のルールなど,学校では学べないことが勉強できました。これは私の様な留学生にとっては,とても貴重な経験だと思いました。

実務訓練で得たもの
鈴 木 洋 史
(機械システム工学専攻1年)

 私は,矢崎総業株式会社 技術開発センターに実務訓練に行きました。矢崎総業(株)は,世界No.1の生産量を誇るワイヤーハーネスを中心とした自動車機器と,もう一方に生活関連機器を中心とした生活環境機器の2動脈があります。技術開発センターは基礎開発を主に行っており,私は自動車部品の磁場シミュレーションを行っていました。その中で,私は技術開発におけるシミュレーションの役割を学ぶ事ができました。
 また,5ヶ月間の実務訓練は,私に足りない様々なことを教えてくれました。その一つは専門以外についても学ぶ必要があるということです。実務訓練では電磁気に関する仕事を行っていましたが,シミュレーションの内容が設計に関する知識も必要としていたこともあり,機械系や電気系などの区別なく勉強していかなければ,社会では通用しないことを実感しました。
 二つ目は,他人の考えを理解し自分の意見を伝える能力を習得する必要があるということです。私は,実務訓練中に結果や考察を会社の人に説明する際に,相手が知りたい内容を理解しやすく伝える事ができず,とても苦労しました。
 約5ヶ月間の実務訓練は,私にとって貴重な経験でした。この経験を修士課程における研究活動や就職活動に役立てたいと思います。