VOS,No.119

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COL報告
実務訓練(長期実践型実習)と教育効果
―文部科学省「特色ある大学教育支援プログラム」―
中 川 匡 弘
(電気系 教授)

図1 実務訓練制度主要組織図
(※語学センターに係る外国語教育の連携は、将来計画に含まれる)

 文部科学省が平成14年度から開始した“21世紀COEプログラム”の教育版(COL:Center of Learning)として,本年度から新たに[特色ある大学教育支援プログラム]の公募が開始された。これを受けて,本学では,飯田誠之 前副学長を中心に準備作業を進め,標記の“実務訓練(長期実践型実習)と教育効果”という取り組み名で体験型学習の実践例として申請し,2件の21世紀COEプログラムに続いて採択された。
 本稿では,来年度以降実務訓練に派遣される学生への紹介も兼ねて,本取り組みの概要を本学の教育理念と本制度の意義と共に簡単に記す。
 本学の使命は,健全な社会の発展に必要な学問及び技術の創造と,それに携わる実践的かつ創造的な能力のある人材の育成を通じ,開かれた大学として広く社会に貢献することにある。この使命達成のため技術科学−“技学”−を創出し,それを担う実践的・創造的な能力を備えた指導的技術者を育成し,社会との連携・協力を図ることを本学の教育理念としている。その具現化の一つとして,昭和54年に実務訓練(長期実践型実習)制度が開始され,本年度で25年目を迎える。その間,民間企業,官公庁,公団等,約500機関に延べ約7,000名にのぼる学生を派遣し,新しい技術のダイナミズムに適応できる実践的かつ創造的な技術者育成という本学の理念に則した技術者教育を実践してきた。本学の実務訓練制度の大きな特徴は,大学院進学が内定した学部4年生の約8割(毎年約350名)が履修し,10月から4〜5か月間と長期にわたり必修科目(8単位)として実施されていることである。特に,職業支援機能が不足する我が国の教育・研究機能の中で,本学の実務訓練制度は就職活動とは一線を画すものであるが,学生が将来の職業選択や実践的技術者として仕事に取り組む姿勢を体得する機会を得るという点で大変意義深い制度であり,実施規模や派遣期間,さらには過去の実績・評価からも国内他大学に類をみない“元祖インターンシップ制度”である。本学の実務訓練の主たる目的は,(1)実践的・技術的感覚を養うこと,(2)組織の中で働くことによって,技術に対する社会の要請を知り,学問の意義を認識するとともに,自己の創造性発揮の場を模索すること,(3)社会において学理と技術が総合的に応用される場を体験することにより,自己の能力を展開し練磨すること,(4)技術に対する問題意識を養い,大学院課程における基礎研究及び開発研究の自立性を高めることにある。すなわち,工業技術の現場における様々な現象,実態を認識し体験する過程を通じて,「指導的技術者として必要な人間性の陶冶」と「実践的技術感覚を体得させること」を目指す教育プログラムと位置づけられる。
 また,近年急速にグローバル化する産業社会に適応する国際性豊かな指導的技術者育成のため,海外機関への派遣を通した異文化交流,さらには,外国語能力の向上にも資する制度として,本学では海外実務訓練を平成2年度から実施しており,今年度まで12年間に亘り,20を越える海外の大学・企業等へ,延べ約100名を派遣している。特に,平成12年度から最近2,3年の間に,派遣学生数は国内派遣学生数の約1割ではあるが,各年度20〜30名と急激に増加している。この海外実務訓練生の派遣に関しては,国内の実務訓練に比較して最先端の技術開発に触れる機会は少ないかもしれないが,国際的感覚・価値観・視野を海外で直に体得するために好適な教育プログラムといえる。参考までに,実務訓練の運営に係る主要組織図を図1に示す。
 実務訓練終了直後の学生に対する学習における各種能力の修得度自己評価アンケートの結果,全ての年度で満足度の項目は,5又は4の評価が80%を超えており,学生の満足度は常に高い。さらに,実務訓練を履修後,本学の大学院を修了し,企業等で実務に携わっている修了生に対するアンケートを実施した結果,5と4の評価を合わせた割合は約9割に上り,“後から振り返っても実務訓練の履修が有効である”と評価していることは,特筆すべき教育効果である(図2参照)。このことから,前述の実務訓練の目的である「指導的技術者として必要な人間性の陶冶」と「実践的技術感覚を体得させること」を通し,大学院での研究活動の動機づけや職業選択など将来展望を形成させる上で,本制度は極めて有効であるといえる。
図2  修士修了後5年以上経過した修了生に対する実務訓練の有効性に関するアンケート(平成11年度)
5: たいへん有効・有用であった
1: 時間の無駄で、意味がない
 以上のように,本学の実務訓練は,本プログラムの題目にもあるように,長期実践型実習(インターンシップ)であり,本学創設以来,基本的教育目標である実践的・創造的能力を備えた指導的技術者を育成する上で,学部・大学院修士課程一貫教育を実効的なものにするために本質的に重要な役割を担っている。事実,筆者も第1回の実務訓練生として外部機関へ派遣され実務に携わったが,その現場での経験は今でも貴重な財産である。また,これまでの国内外での実務訓練の実績を踏まえ,本プログラムでは,近年加速する産業社会の国際化・グローバル化時代への対応として,海外派遣学生に対する外国語教育,並びに,海外から日本国内への派遣留学生に対する日本語教育の充実も視野に入れ,丸山久一 現副学長を中心に本制度の今後の展開に対する模索・検討を進めている。