VOS,No.119

 COE報告 [Back]

「グリーンエネルギー革命による環境再生」
21世紀COEとは
拠点リーダー 原 田 秀 樹
(環境・建設系 教授)

 21世紀COE (Center of Excellence:卓越した拠点)プログラムとは,文科省の公募要領によると,「わが国の大学に世界最高水準の研究教育拠点を学問分野別に形成し,研究水準の向上と世界をリードする創造的な人材育成を図るため,重点的支援を行う」とある。具体的には,全国の博士課程レベルの研究科や研究所,研究センターなどを対象に研究教育計画を公募し,その中から優れた成果を挙げ(業績),将来の発展が見込めるもの(将来性)を選定し,研究費を重点的に5年間配分するというものだ。
 21世紀COEプログラムは,平成13年6月の経済財政諮問会議(議長小泉首相)に遠山文科大臣から提出されて,のちに《遠山プラン》と呼ばれ日本中の大学を激震することになる「大学の構造改革の方針」に端を発する。構造改革の三本柱として,(1)「大学の統合再編と削減」,(2)「国立大学の法人化」,とならんで,(3)「第三者評価による競争原理を導入して国公私『大学トップ30』を選定し,世界最高水準に育成する」とある。そこには,法人化(2)によって自由競争の趨勢をつくりあげ,大学の統合・再編(1)と,その先の大幅な削減・切り捨て(1)を一気に押し進めるために,第三者評価による『トップ30』を選別・淘汰システムとして巧に組み込もうとする,文科省のしたたかな戦略と強い意志を見てとれる。この『大学トップ30』は,お上による大学の新たな序列化に繋がるという理由で,最終的に“21世紀COEプログラム”という差し障りの少ない名称に変更されていった経緯がある。こうして,平成14年度から文科省に新規事業として「研究拠点形成費補助金」が措置された。14年度と15年度の2年間の審査で,全学問領域10分野を対象として全国の国公私立大学から申請されたより抜き1067件のプログラムの中から,計246拠点が選定された。各分野の採択件数は平均25件で,当初の名称『大学トップ30』どおり,全国の博士課程を有する大学のおおむね5%程度が選定されたことになる。国が競争原理の導入を明確に掲げ,日本中の大学が必死になって「共通の土俵」で競い合い,その勝者を社会に示したことは,明治以来のわが国の大学制度の歴史のなかでも初めてのことである。審査結果が発表された翌日の新聞各紙には,「生き残りをかけて大競争」というような,大きな見出しが踊った。時間が経つにつれて,COE(競争原理の導入)という“黒船”の出現による影響がじわりと増幅しつつある・・

太平の眠りを覚ます シィ・オゥ・イ
たった数億で 夜も眠れず

図1

 本学では,平成14年度《化学・材料科学分野》で申請した「ハイブリッド超機能材料創成と国際拠点形成」と,平成15年度《学際・複合・新領域分野》で申請した「グリーンエネルギー革命による環境再生」の,計2件のプログラムが選ばれた。採択された246件の研究拠点のうち,国立大が181件と,全体の74%を占めたのに対し,公立大学9件(3.6%),私立大学は56件(23%)にとどまり,“国高私公低”の傾向がはっきり浮き彫りになった。特に東京大や京都大などの研究の陣容が整った旧7帝大は合計で105件と,全体の4割以上を占める圧倒的勝利であった。ちなみに,東大vs長岡技大の研究陣容・規模を教員定員数(講師以上)で比較すれば2774対158,学生定員数で比較すれば27181対2258である。教員数では,17.5倍,学生数では12倍もの規模の差がある。大学当たりの申請件数には制限がないため,規模の大きい大学ほど有利なのは当然である。そこで,教員当たりの採択件数として整理すれば図1のようになる。
 若干のバイアスはかかっているものの,数量の比較としてではなく,質としての研究アクティビティをより正確に反映できる。わが長岡技大の実力は,奈良先端大,豊橋技大と並んで,文字通り全国トップの位置に就けていることになる。21世紀COEによって,大学自体もわれわれ事業推進者も大変な苦労を背負い込んでしまったが,もし報われるものがあるとすれば,それは法人化・大学競争の激動の時代にあって,地方の単科大学(かつて新構想大学,いま一地方大学)ながらも大いに誇れるものを持ち得たということかもしれない。

シィ・オゥ・イ 追いかけられて はやいちねん
途半ばにて いきもきれぎれ

図2

拠点形成の背景と内容
 20世紀中葉,人類は「緑の革命」によって飛躍的な食糧増産を可能にし,飢餓を克服し,さらなる繁栄を成し遂げてきた。21世紀に突入した今,人類はさまざまな地球環境の難問に直面している。健全で持続可能な地球に再生するためには,化石エネルギー依存から脱却し,新たなエネルギー創生と物質循環・物質創製を推進するための「緑のエネルギー革命」を強力に展開していく必要がある。このような背景のもとで,本COEプログラム「グリーンエネルギー革命による環境再生」では,学内の世界水準の研究業績を有する三つの研究グループ((1)バイオマスエネルギー変換技術,(2)燃料電池・光触媒,(3)微生物分解・バイオレメディエーション)が結集して,次世代の環境低負荷型のエネルギー創生と物質循環・物質創製による「緑のエネルギー革命」を世界規模で推進していく人材育成のための国際研究教育拠点を形成する。具体的には,廃棄物・廃水,未利用有機性資源(バイオマス)から微生物変換反応によってメタン,水素,アルコールを高速・高効率で生産し,新規開発する直結型燃料電池に繋げるエネルギー創生グループと,難分解性物質の微生物浄化とその過程から生成するバイオ資源から新規の高機能なバイオポリマーを創製する物質循環グループ,の二大研究グループから成る学際的横断的研究組織を構成する(図2参照)。本研究拠点構想は,循環型社会の構築にむけて中核となるバイオマス・ニッポン国家総合戦略に沿う我が国の科学技術政策上の重要な意義を持っている。
 本拠点では,プロジェクトを効果的かつ効率的に遂行するため総合研究棟に「グリーンエネルギー国際開発センター」を設置し,それを中核として,国内的には本学の特徴である高等専門学校との連携を益々活発化して共同研究教育・人事交流を推進し,さらに国外的には,アジア圏を中心とした大学・研究機関からの研究者・留学生の受け入れと国際共同研究開発体制を強化して,「緑のエネルギー革命」を担う有能な人材を育成して世界に輩出していく国際拠点を形成する。