電子デバイス・光波エレクトロニクス工学大講座(液晶ディスプレイ研究室)
 本研究室では、液晶を中心に分子エレクトロニクスの研究を行っている。分子統計力学的な立場から各種液晶相の出現機構を明らかにするとともに、各相の示す電気的、光学的特性を中心とする物性の理論的、実験的研究を行っている。さらにそれらの物性を利用した、高速応答、カラー表示素子の開発、光変調素子、光偏光素子等のオプトエレクトロニクス素子への応用を目指している。特に、時間分解分光エリプソメータを用いた繰り込みエリプソメトリ法による液晶デバイスパラメータの決定アルゴリズムは、決定確度が高いうえに応用範囲が広いことから注目を集めている。またレーザーホログラムによって作製したレリーフグレーティング構造を界面に有する次世代型超省電力型液晶表示素子の物性的評価を行うとともに、それらのデバイスへの応用も目指している。

研究テーマ
1.新方式ネマティック液晶表示素子の開発
(1) IT(In-plane switching Twisted nematic)モード、a-IT(amorphous IT)モードの開発とその特性評価
(2) 次世代型超省電力型液晶セルの開発と連続体理論を用いた特性解析
(3) 繰り込みエリプソメトリ法による液晶デバイスパラメータ決定法の確立
(4) LCD用光学フイルムのシミュレーション技法の構築

2.強誘電性・反強誘電性液晶の物性とその応用
(1) 層構造と分子配向の解明・配向制御
(2) 反強誘電性液晶のサブフェイズの構造と相転移機構の解明
(3) 物性測定法の開発・MDシミュレーション
(4) スイッチング機構の解明と高速応答表示素子への応用

3.界面での液晶の配向性に関する研究
(1) 基板界面でのプレチルト角と極角・方位角アンカリング強度の測定法
(2) 分光エリプソメータを用いた液晶の界面配向状態の研究
(3) レーザーフォログラフィーにより作製したグレーティング界面のアンカリング評価

主要研究設備
  LB膜作製装置
  真空蒸着装置
  偏光変調方式時間分解分光エリプソメータ
  示差走査熱量分析装置
  原子間力顕微鏡
  フォログラフィックレリーフグレーティング作製装置

横電界駆動捩れネマティックLCD内部の電界分布シミュレーション例

担当   教 授   赤羽 正志
    助教授   木村 宗弘
http://alcllan.nagaokaut.ac.jp/

電子デバイス・光波エレクトロニクス工学大講座(電子セラミック研究室)
 我が国の技術・科学分野における先導的課題は新材料の開発である。特にエネルギー変換に関与する新材料の開発は、次世代の産業構造を支える中心的課題である。光・電気・磁気および原子・分子等に付随する一次エネルギーを相互作用を通じて効率よく変換し得る素子の基材として、酸化物をはじめとする各種無機化合物セラミックスに注目する。それらの均一体、複合体の薄膜、バルク、微粒体を合成し、物質自身はもちろん、表面や界面で強調される物理的化学的作用を機能性の観点から評価・解析する。その結果、見いだされる新しい知見を総合して、新材料の開発および素子としての実用化を図る。

1.電磁機能性材料に関する研究
1.1 酸化物高温超伝導セラミックス 
  1986年、La系酸化物高温超伝導体が発見されて以来、Y系、Bi系、Tl系、Hg系高温超伝導体が次々に開発されてきた。本講座では、高温超伝導セラミックスの合成・作製に関して数々の成果を挙げている。
  また、高温超伝導体の線材に、室温で、ある値以上の電圧を印加するとホットスポット現象(線材の一部分のみが赤熱する現象)が現われることを見出し、この現象を利用した定電流発生素子、酸素センサ、流速計、超低周波発振素子等の開発を行っている。
1.2 半導体セラミックスの界面準位解析
  PTCR特性やバリスタ特性など自己調節・自己診断等のインテリジェンスを有する誘電体セラミックスでは、セラミックス粒子表面または粒界に形成される界面電子準位が機能発現に関して重要な役割を担っている。本講座では等温過渡容量法(ICTS)による界面電子準位の解析を行っている。
1.3 強誘電体薄膜
  不揮発性メモリーの電荷蓄積用材料として重要であるペロブスカイト構造の強誘電体薄膜の合成を試みている。また、強誘電特性の向上と低温合成を目的とし、各種成膜方法による薄膜の配向性の制御を試みている。

2.光機能性材料に関する研究
2.1 光検知式水素ガスセンサ
  「電気特性の変化」により水素ガスを検知する従来のセンサと異なり、「光学特性の変化」により水素ガスの検知を行う新型センサの開発・基礎研究を行っている。本センサは、希土類金属、セラミックスや触媒作用を有する金属などの薄膜をガス検知媒体としている。これまでに、安全性、選択性の向上のみでなく高感度および高速応答の実現に成功している。
2.2 通電加熱法による酸化亜鉛結晶の成長制御
  酸化亜鉛の線材を通電加熱すると、線材表面に多様な形態の結晶が成長することを見出し、本現象の新規結晶成長法としての応用を検討している。また、得られた結晶の光機能素子としての応用を検討している。
2.3 チタン酸バリウム単結晶の作製
  フォトリフラクティブ材料として光情報処理等への応用が期待されているBaTiO3単結晶の新規な作製法を検討している。
2.4 非線形光学材料
  次世代光情報システムの基幹材料となる非線形光学材料に関して材料探索を主とした基礎研究を行っている。特に、物理的化学的に安定な無機材料を対象とし、既知物質(半導体微粒子分散ガラス、カルコゲナイトガラス)に対する新たな視点からのアプローチをはじめ、各種透明無機材料に関しても三次非線形光学特性の評価を行っている。

酸化亜鉛セラミックス線材を通電加熱することにより線材表面に成長した特殊な形態を有する酸化亜鉛単結晶(ダブルホロー)

担当   教 授   高田 雅介
    助教授   岡元智一郎
    教務職員   黒木雄一郎
http://takata.nagaokaut.ac.jp/

電子デバイス・光波エレクトロニクス工学大講座(超伝導デバイス研究室)
 本講座では、超伝導エレクトロニクスに関する研究を中心に行っている。特に、低温超伝導体(NbN系)トンネルデバイスや量子細線型デバイス、及び高温超伝導体(Bi-2212)単結晶を用いた固有Josephson接合による超高感度の量子干渉型生体磁気センサー(dc-SQUID)、及びサブミリ波帯の超高速・高感度の集積化ヘテロダイン受信機の開発を目的とし、デバイス作製技術の検討、動作解析等を行っている。

 現在のエレクトロニクスの繁栄を支えているのは主としてシリコンデバイスである。しかし、例えば多次元偏微分方程式のような科学技術計算、風洞実験や核融合プラズマのシミュレーション、気象予測や宇宙探査など、大容量情報処理を必要とする分野では、さらに高速に情報処理を行うために超高速論理デバイスが必要になる。
 超伝導エレクトロニクスの主をなすJosephsonデバイスは、新しい超高速スイッチングデバイスの有力候補であり、既にJosephsonデバイスを用いたマイクロプロセッサ(CPU)が試作され、40-100GHzのクロックスピードで動作することが実証されている。現時点では、まだ大規模容量の超伝導メモリーがないが、将来ジョセフソンデバイスを用いた超伝導計算機が実用化されたとすれば、現在の大部屋に収まる程度の半導体デバイスによる汎用大型計算機が、わずか10cm3程度の小さなものとなる。
 超伝導デバイスの別の応用は、電磁場に対して極めて高感度・高速に応答するという特性を利用するものである。例えば、ミリ波ないしサブミリ波帯で有用な準粒子SIS(Superconductor-Insulator-Superconductor)ミクサは量子ノイズの限界の感度を示しており、超高感度を必要とする計測分野では必要不可欠なデバイスとなっている。また、交流Josephson効果を使うミクサは数百調倍にも及ぶ高調波ミクシングが可能であり、発振器にも増幅器にもなる多機能デバイスである。
 一方、生体磁気などの微弱磁場の計測には超伝導量子干渉型デバイス(dc-SQUID)が用いられる。SQUIDは脳の活動状況をリアルタイムでモニターできる極めて高感度の磁気センサーであり、10−13 Tesla程度までの磁場を検出できる。これは、半導体や磁性体による磁気センサーの追随を許さないものである。現在、我国でも大病院への導入が進められており、既に普及している超伝導核磁気共鳴診断装置(MRI-CT)と同様に、将来、臨床医学に大きな貢献をもたらすことが期待される。
 本グループでは、独立行政法人・情報通信研究機構との共同研究を進めており、デバイス作製、ノイズ特性やマイクロ波応答などの基礎特性評価を中心に研究を行っている。特に、超伝導臨界温度が90K級のBi-2212単結晶を用いた固有Josephson接合については新しい素子加工技術を開発し、液体窒素温度(77K)以上での良好なJosephson特性を有する素子を得ている。現在、この単結晶素子をTHz帯ミクサやSQUIDへ応用するための研究を進めている。

図1 Bi-2212ナノアレイ型デバイスの作製及び測定の様子
図2 クリーンルームの様子

担当   教 授   濱崎 勝義

電子デバイス・光波エレクトロニクス工学大講座(半導体工学研究室)
 本講座は、半導体工学担当講座として学部においてはデバイス工学I、大学院修士課程においては半導体素子工学特論I、博士後期課程においては電子機能素子工学特論を担当しており、半導体材料・物性、デバイスプロセスを中心に広く半導体の研究を行っている。具体的には、低温での高品質半導体薄膜の成長とそのデバイスへの応用を目的として、第三電極を有するマグネトロンスパッタ法、マイクロ波及び高周波プラズマCVD法を用いた研究を、また近年Cat-CVD法として注目されている触媒表面反応を用いた高効率反応性ラジカルの生成技術を利用して新規の半導体結晶・エピタキシャル膜、誘電体薄膜、コーティング膜の作製を行うと共に、CVDにおける反応過程のその場観察や得られた結晶・薄膜の特性評価に関する研究を行っている。さらに得られた特異な構造基板や結晶膜を用いて光電変換素子、高温用デバイスへの応用を展開している。同時に新しい反応性プラズマの生成装置やそれを用いての半導体プラズマプロセスの開発を行っている。最近の具体的な研究テーマ等は、以下の通りである。

1.最近の研究テーマ
1.1 反応性プラズマ及び触媒分解反応を用いた化合物半導体薄膜の成長とヘテロエピタキシャル成長過程のその場観察
(1) トライオード型RFプラズマによる空間的アフターグロー放電のプラズマパラメータを精密に制御した半導体の低温結晶成長
(2) トライード型マグネトロンスパッタ法を用いたF共ドーピングによるZnO透明導電膜の作製
(3) ホットメッシュCVD法による高品質SiC膜のヘテロエピタキシャル成長と高効率太陽電池への応用
(4) ホットメッシュCVD法によるSOI基板およびSiO2上への高品質結晶SiC膜の成長によるSiCOI構造基板の創成と耐環境・高温対応センサーへの応用
(5) Cat-CVD法を用いた新規の窒化物、酸化物半導体の結晶成長とその高温デバイスへの応用
(6) 高エネルギー電子線回折及び走査型プローブ顕微鏡を用いた半導体表面上でのヘテロエピタキシャル成長過程のその場観察と表面構造解析

1.2 半導体デバイス、集積回路作製プロセスのための新しい反応性プラズマ装置の開発
(1) ヘリカルアンテナを用いた低圧高密度プラズマの生成とプラズマ特性の評価
(2) アフターグロー空間のプラズマパラメータを制御したECRプラズマによるイオンビームの生成と半導体結晶成長・表面改質への応用

2.主要研究設備
・RHEED 及びSTMを装備した超高真空装置
・ECRプラズマCVD・Cat-CVD複合装置
・トライオード型マグネトロンスパッタ装置
・トライオードプラズマCVD装置

超高真空対応走査型トンネル顕微鏡システム
ECRプラズマCVD・Cat-CVD複合装置

参考文献
1)安井寛治他、応用物理、74 (6)、749(2005).
2)Yasui, K. et al, Jpn. J. Appl. Phys., 44 (3), 1361(2005).
3)Yasui, K. et al, Nanotechnology 15, s406(2004).
4)Yasui, K. et al, Adv.in Tech. of Mat. & Mat. Pwc. J. 8(2), 256(2006).
5)Yasui, K. et al, Jpn. J. Appl. Phys., 44(1B)684(2005).

担当   助教授   安井 寛治

電子デバイス・光波エレクトロニクス工学大講座(デバイスプロセス研究室)
 近年の電子デバイス産業では、情報化社会の発展および急激な国際競争の影響により、その多様化がますます加速している。また、従来の半導体素子を基本とした高集積回路素子(LSI)だけでなく、付加価値の高い次世代デバイスの開発が求められている。現在、機能性電子デバイスとして、MEMS(Micro Electronic Mechanical System)が注目されている。このデバイスは、今後のロボット・医療・バイオテクノロジー・ユビキタス分野へのインターフェイス的な機能を有しており、従来の情報記憶および演算を主としたLSIにはない機能を有している。これらのデバイス実現および研究開発には、先端デバイスプロセスの研究開発が必要不可欠である。その中で核となるプロセス技術は微細加工技術である。また、ナノスケールで高感度なプロセス評価技術の発展も必要である。本研究室では、3次元での微細加工技術を駆使しながら新規デバイス開発を行うとともに、高感度な表面解析技術の研究開発を行っている。

1.機能性デバイスプロセス
  従来の電子デバイス研究に用いられてきた微細加工技術は、平面を主体とした2次元加工であった。本研究室では、3次元加工技術を含め、様々な微細加工技術を構築している。
1.1 サイドウォール形成方法
  微細パターンの形成後に、CVDにより有機薄膜をコンフォーマルに形成する。これにより、狭間隔のパターンを作製できる。現在、40nm間隔のパターン形成を可能にしている。これにより、ナノスケールの3次元形状作製に貢献する。
1.2 位相シフト技術
  パターン露光光の空間位相を局所的に反転させることにより、光学像コントラストを改善する。これにより、大幅な解像力を引き出せることが知られている。本研究室では、この技術を用いて、アスペクト比(縦横比)が10以上のパターンを形成している。この技術は、MEMSデバイスの構築に必須となる。
1.3 3次元加工
  従来のリソグラフィでは、2次元加工の積層によって、3次元形状を実現している。本研究室では、アンダーカットなどの特異な3次元の金属配線技術を、ナノインプリント技術やリフトオフ技術を用いて作製している。
1.4 走査型プローブ顕微鏡(SPM)によるナノスケール加工
  AFM/STM等を用いて、無機固体表面に陽極酸化法による酸化物絶縁層、および電界蒸着法による金属配線を形成する。これらを、10nm以下の局所領域に形成する。このナノ加工技術を用いて、新規デバイスの作製を試みている。

2.プロセス評価技術開発
2.1 微小固体の付着凝集性解析手法
  原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、ナノスケール固体の付着・凝集性の解析手法を構築し、様々な分野へ展開しつつある。これにより、レジストパターンの高精度化、ナノ微粒子の凝集性制御などの産業的に有効な役割を果たしている。
2.2 表面結露法によるクリーンネス解析
  基板表面に微細な微小液滴群を形成し、特定波長光を照射することで、円形のフリンジ模様を形成させる。この光学的情報に基づき、大型基板での汚染分布を非破壊で一括で求めることができる。
2.3 超クリーン化技術
  基板上に付着したナノスケールの超微粒子の基礎物性を解析する。数10nmサイズの有機および無機微粒子と基板表面との相互作用、凝集特性を中心に解析する。これにより、超クリーン表面の実現を目指す。

3.機能性MEMS(Micro Electronic Mechanical System) デバイス開発
3.1 微小構造体の開発
  位相シフトおよび超解像技術による3次元微細構造を作製し、機能性デバイスの開発を行っている。特に、微細構造内における液体の濡れ性制御により、新規メモリデバイス、フィルター、センサー等の開発を行っている。
3.2 生体機能デバイス
  生体機能と連動したセンサー、制御素子などの基礎研究を行っている。今後、バイオテクノロジーへの応用を検討する。

(参考論文)
・A.Kawai, J. Photopolymer Sci. Technol.,18. 729 (2005).
・河合 晃、日本接着学会誌、36, 2(2000).

担当   助教授   河合  晃
http://kawai.nagaokaut.ac.jp

電子デバイス・光波エレクトロニクス工学大講座(光・量子エレクトロニクス研究室)
 光技術は光ファイバ通信を中心として実用化の段階に達している。しかしながら光技術の持つ特徴を最大限に活用しようとする次世代の光技術、例えば、全光型通信、光コンピュータ等を想定したとき、より高度な光機能素子が要求される。本研究室ではこのような技術動向を踏まえ、光を電磁波として厳密に解析する手法で、半導体と誘電体材料(非線形を含む)を中心にした光集積回路、光機能素子(半導体レーザ、LEDなど)の特性解析、コンピュータシミュレーションに関する教育及び研究を担当している。さらに、光・量子エレクトロニクスの立場からフォトニック結晶の基礎研究を行い、フォトニクス(光)分野における新しい光素子の創製と開発を目指している。

1.研究分野
  光集積回路は、従来のICが電気信号を扱っていたのに対し光信号を扱うICであり、光回路をコンパクトにまとめられる特徴がある。光回路の設計においては電子回路と異なり、損失を少なくして小型化することが困難なためである。この問題を解決するための光導波路について基礎研究を行っている。
  さらに光集積回路の将来は、シリコン基板上に作られた配線用の光導波路(PLC)上に各個別光部品を配置して結ぶハイブリッド光ICの段階を経て、全ての素子を同一の半導体基板から作るモノリシック光ICに至ると予想されるので、これを目指して集積化レーザや光増幅器、分波器、集積化半導体導波路などの解析を行っている。
  異なる誘電率(屈折率)を持つ誘電体を光の周期で規則正しく配置した人口結晶であるフォトニック結晶は光を非常にコンパクトに閉じ込めることができるのでレーザ材料だけでなく光集積回路の基板としても注目されており、これの光集積回路用素子への応用についても研究を行っている。
  フォトニック結晶を用いた光導波路は光の閉じ込めが強く、曲げようとしたり、分岐させようとしても導波路に沿って伝播しないことがあるので、導波路に簡単な改良を加え自由に曲げたり分岐させたりして光デバイスを考案する研究を行っている。
  またフォトニック結晶は半導体からの自然放出光をも制御できるので、閾値のないレーザを創ることができると期待され研究されている。このタイプのレーザを光集積回路に組み込んで集積レーザとする研究を始めている。
  解析には有限差分時間領域(FDTD)法などコンピュータを駆使するシミュレーション手法を用いている。図はその一例である。

2.研究テーマ
1.フォトニック結晶と光集積回路用デバイスへの応用(PBG(Photonic Band Gap)導波路、スイッチ、光分岐、波長フィルタ等)
2.フォトニック結晶の半導体レーザ、LED、光増幅器への応用
3.光素子と光導波路との結合

マッハツェンダー型光スイッチのシミュレーション例
(上:クロス状態、下:バー状態)
PBG導波路を使った光3分岐のシミュレーション例

担当   教 授   上林 利生
    技術職員   豊田 英之

電子デバイス・光波エレクトロニクス工学大講座(レーザー応用工学研究室)
 新しいレーザー材料や発光材料の開発とその光学特性の研究、環境に優しい太陽電池などの光デバイスの開発など、光と材料・デバイスに関する研究を行なっている。主に多元化合物半導体の無機材料が研究対象であるが、光デバイスへの応用を目指して有機材料の研究も行なっている。

1.希土類添加チオガレート固体レーザー材料
  希土類元素Ceを添加したCaGa2S4は青緑域の高効率発光帯をもち、波長可変固体レーザー材料への応用が期待されている。我々は結晶サイズは小さいが簡便な方法で透明試料の作製に成功した。この結晶を用いて光利得特性などレーザー材料としての基礎的な光学特性を調べている。励起用に半導体レーザーを用いた全固体化青緑連続波長レーザーの開発を目指している[1]。

2.不純物添加II III2VI4蛍光体
  我々はPbやSnを微量に添加したCaGa2S4を紫外光で励起すると可視域全体で強い発光を示すことを見いだした。この蛍光体を添加した溶剤をガラス基板上に塗付することにより、大型平面蛍光体(図1)を作製し、これを用いた蛍光灯に代わる平面光源の開発を行っている。また、CaGa2S4に代わる新たな母体、PbやSnに代わる新たな不純物を探し、さらに効率よく演色性の高い蛍光体の開発を目指している[2]。

図1 Pb添加CaGa2S4を塗布したA4サイズの平面型蛍光板

3.環境調和型太陽電池
  Cu2ZnSnS4(CZTS)半導体は、その構成元素が全て地殻に豊富に存在し、毒性を持たないという特徴を持っている。また、直接遷移型半導体で光吸収係数が104cm-1程度であり、バンドギャップが太陽電池に最適な1.5eV程度であることから、我々はCZTS薄膜を光吸収層とした太陽電池開発の研究を行っている。CZTS薄膜の作製法として非真空下で容易にしかも安価な装置で薄膜が作製できる光化学溶液堆積法(PCD法)を採用している。最終的には太陽電池を構成する半導体層(光吸収層、界面層、窓層)をすべて非真空プロセスで作製することを目指している。また、パルスレーザー堆積法(PLD)法によるCZTS薄膜の作製にも成功しており、これを用いた太陽電池素子化の研究も行っている[3]。
  また、このCZTSは物性がほとんど知られていない。そこで、我々は単結晶の作製を行い、発光スペクトルの観測分析を行っている。これまで初めてCZTSからの発光スペクトルを観測し、その起源がドナーアクセプター対再結合に起因することを見いだしている。

4.RFプラズマ堆積ポリマー膜の光機能性
  RFプラズマ堆積ポリマー膜は強く架橋し、通常のポリマーとは異なる性質を示す。RFプラズマ堆積a-C:H膜は高硬度、透明、有機溶媒不活性、高効率広帯域可視発光を示すなどの特徴をもち、紫外光照射により光吸収端の移動、膜厚減少(光エッチング)などの光照射効果を示す。我々は、種々の無機・有機物の添加により発光特性を制御し、光機能性を賦活し、光メモリーなどへの応用を目指している。また、一般的には困難であるといわれているRFプラズマ堆積法による高導電性膜を作製し、高耐熱・高強度有機発光素子や有機トランジスタの開発を目指した研究を行なっている。

参考文献
[1] K. Takayama et al., Jpn. J. Appl. Phys. 44(2005)729.
[2] T. Dohashi et al., Jpn. J. Appl. Phys. 44(2005)772.
[3] K. Moriya et al., Jpn. J. Appl. Phys. 44(2005) 715.

担当   教 授   打木 久雄
    助 手   田中久仁彦
http://femto.nagaokaut.ac.jp/

電子デバイス・光波エレクトロニクス工学大講座(化合物半導体材料・デバイス研究室)
 今日のオプトエレクトロニクス分野の発展は、III−V族半導体を始めとする様々な化合物半導体光デバイスの研究に負うところが大きい。我々はバンドギャップの大きな材料として酸化亜鉛やチオガレート化合物、小さな材料としてSb系半導体に注目し、結晶成長を含めた光デバイス化を目的とした研究を行っている。また、スピントロニクス素子実現に向けた材料であるIII−V族希薄磁性半導体や磁性金属薄膜のSi基板やGaAs基板上へのエピタキシャル成長についても研究を進めている。薄膜の物性測定には、ホール効果の温度依存性、時間分解・非線形分光法、分光エリプソメトリー、高磁場下でのフーリエ分光法等を用いている。

1.狭ギャップ半導体と近赤外発光素子・センサー応用
  分子線エピタキシー法を用いてバンドギャップが近赤外領域にあるGaAs1-xSbx(x<0.5)薄膜についてSi基板への結晶成長の研究を行っている。Si基板上へのSb系半導体の結晶成長では、光電子集積回路(OEIC)を構成する近赤外発光素子(LED、LD)を目指したヘテロエピタキシー技術の確立とデバイス化の研究開発を進めている。Si基板上では、AlSbが緩衝層として有効に働き、その上部にGaSb層をエピタキシャル成長させている。また、GaAs1-xSbxへのn型ドーパントとして高濃度にドーピングできるSnについて、そのドーピング特性を検討し、組成xに依存した伝導特性について調べている。現在、量子井戸構造などの作製実験を行い、発光素子の実現を目指している。

2.III−V族希薄磁性体の結晶成長と応用
 III−V族半導体に磁性原子を添加した希薄磁性半導体は、今後新しい展開が予想されるスピントロニクス分野の基盤材料として期待されている。従来の電子の電荷に加えてスピンの自由度も利用することにより新しいコンセプトの光デバイスの研究を進めている。現在、Si集積回路への光電子デバイス応用を目的に、Si基板に分子線エピタキシー法(MBE)を用いてGaAsおよびGaMnAsヘテロエピタキシャル成長の研究を進め、その電気的、磁気的特性を調べている。GaMnAsは低温結晶成長が必要でありMBE法が唯一の方法である。Si基板上に成長したGaMnAs膜で良好なヘテロエピタキシャル成長と152Kの強磁性転移温度を確認している。これらの研究データに基づいて、磁性半導体と非磁性半導体を組み合わせた量子井戸構造の作製を行い、その物性特性とデバイス応用を探索する。

3.新しい物質の研究
  国際共同研究を含め、他の研究機関と共同で新しい物質の研究に取り組んでいる。一つは、可視域で高効率な幅の広い発光を示す希土類元素(Eu、Ce)添加のチオガレート化合物(CaGa2S4等)やストイキオメトリック希土類化合物(EuGa2S4、NaNd(WO4)2等)であり、高品質なバルク単結晶の作製に取り組み、Ca1-xEuxGa2S4において光学利得の存在を初めて明らかにした。さらにレーザー発振の観測を目指し、新しい波長可変型の半導体レーザーとしての可能性を探っている。また、室温強磁性半導体の実現に向けた、カルコパイライト型磁性半導体のエピタキシャル成長にも取り組んでいる。

4.磁性金属エピタキシャル薄膜の研究
  スピントロニクスデバイスの実現には半導体中へスピン注入する磁性金属薄膜電極の研究が必要である。特に、III−V族半導体にエピタキシャル成長する磁性金属薄膜であるMnAsとMnAs1-xSbxについてその結晶成長とその磁気的性質について調べている。これらの金属は室温で強磁性体であることから、III−V族希薄磁性半導体と組み合わせることにより、トンネル磁気抵抗素子などの新しいデバイスが期待される。

5.ZnO透明導電膜の形成とポーラスSi膜への応用
  ポーラスSiは陽極酸化法で形成され、その形成条件により可視領域の発光が観測される。このようなポーラスSiの作製とその上部に形成する透明導電膜として低抵抗ZnO膜について研究を行い、これらを組み合わせた発光ダイオードの可能性について開発を進めている。

大講座共用特殊装置
・高磁場下広波数域FT分光装置(55000〜5cm−1
・ピコ秒分光装置(波長可変ピコ秒・サブピコ秒レーザー、時間分解能10psストリークカメラ)
・高分解能ラマン分光器(分解能0.15cm−1
・分光エリプソメーター(1.5〜4.5eV)
・原子間力顕微鏡

発表
1)S.Sato et al. Appl.Surf.Sci. 242(2005)134.
2)A.Kato et al. J.Phys.Chem.Solids 66(2005)2076.

担当   助教授   内富 直隆
    助 手   加藤 有行
    教務職員   神保 良夫
http://opto.nagaokaut.ac.jp/

電子デバイス・光波エレクトロニクス工学大講座(有機光エレクトロニクス研究室)
 当研究室では、光を光通信、光記録、光情報処理などの工学に応用するため、幾何光学、波動光学、機能材料工学、などの手法を駆使し、光波制御分子配向や非線型光学などの物質と光の相互作用と構造制御に重点を置いて、実験的・理論的研究を行っている。具体的な研究対象としては、近年、光機能性材料として注目されている高分子、色素、液晶などの有機材料を取り扱い、これらの光誘起異方性、非線型光学効果、(実時間)ホログラム光記録、光メモリーなどに関して、先駆的な研究を行っている。これらの研究は、高密度ホログラム光記録、画像処理などの光情報処理システム、高機能光デバイスの開発など、将来のオプトエレクトロニクス分野での応用が期待されている。

1.分子再配列型フォトリフラクティブ効果1)
  フォトリフラクティブ効果は、mW程度の低いレーザー出力での実時間ホログラム形成が可能であること、記録干渉縞と回折格子の間の位相シフトによる2光波間での光増幅が可能であること、などから、光情報処理用デバイスや大容量のホログラム記録媒体として注目されている。本研究室では、光機能性有機材料に関する技術を駆使し、干渉光照射によって発生する光空間電界による液晶分子の再配列を利用した巧妙な材料系を世界に先駆けて見出し、高効率位相共役光発生媒体、実時間画像エッジ抽出、画像空間周波数の実時間フィルタリング、などの応用実証を行ってきている。また、光導電性薄膜と液晶層の機能性ハイブリッド構造による分子再配列型フォトリフラクティブ効果に関する研究を開始している。

2.光反応性液晶高分子を用いた光デバイス2-4)
  光架橋機能を有する液晶高分子に直線偏光紫外線を照射することによって軸選択的に光化学反応を起こし、さらに熱処理することによって自己組織的に熱的に安定な光学異方性を誘起できることを見出した(図1)。
  この機能を用いることによって、新しいタイプの高機能光デバイスを作成できる可能性がある。まず、この材料の機能と偏光ホログラムの手法を組み合わせることで、回折機能と、偏光変換機能を共に有する高機能光デバイスの構築に成功した(図2)。
  さらに、この手法によって、1次元だけでなく2次元的にも回折分散機能を有する偏光変換回折素子の作成に成功している。現在は、新規開発された光デバイスの実用化分野の開拓とさらなる機能を有する光デバイスの開発を行っている。

図1 光架橋性高分子液晶の偏光紫外線反応による自己組織的分子再配向
図2:偏光回折格子の偏光変換回折機能

3.ゲスト・ホスト液晶の巨大非線形光学効果
  低分子液晶に機能性の色素をドープしたゲスト・ホスト液晶が巨大な非線形光学効果を示すことを見出し、ファブリ・ペロ構造での全光型光スイッチや光制御型液晶レンズへの応用を実証した。

4.液晶光学デバイスのFDTD法による解析
  液晶回折格子、光誘起液晶レンズ、液晶散乱型偏光素子の光学特性を詳細に検討するため、FDTD法による解析を行っている。

参考文献
1)J. Appl. Phys. 94, 23(2003).
2)J. Appl. Phys. 94, 1298(2003).
3)Appl. Phys. Lett. 87(2005)161112-1 − 16112-3.
4)Opt. Lett., 30(2005)1950-1952.

担当   教 授   小野 浩司
http://optik.nagaokaut.ac.jp/

電子デバイス・光波エレクトロニクス工学大講座(メゾスコピック構造・物性機能研究室)

ナノ構造制御と物性・機能発現
  今世紀初頭から急速に進展しつつあるナノテクノロジーの分野では、我々が物質に対して持っている常識的概念が通用しないことがしばしばである。例えば、ナノメートルサイズの金の超微粒子は室温ですでに溶けている。また、金属はナノ構造になると光を反射するのではなく、むしろ非常に良く吸収するようになる。こうした独特の物質世界が存在している。
  本研究室では、このようなナノスケールで物質構造を創生し、新しい物性・機能の発現との関連を研究している。すなわち、構造・機能の新しい評価技術の確立を基礎に、新しい成膜技術を開発してナノ構造を構造制御し、そして形成された構造の熱や電磁場(光)などに対する応答を調べ、そこに発現するナノ構造に起因する物性・機能の最適化を行っている。主たる構造評価手段は高分解能電子顕微鏡、X線回折である。

メゾスコピック構造を組込んだ色素増感太陽電池
  太陽電池は異なる物質を積層させた積層構造を持っている。特に表面が平坦であると、反射によるエネルギー損失は十数%にも達し、エネルギー密度の低い太陽光の場合無視できない因子である。本研究室では金属の水熱反応によりメゾスコピック構造を有する透明な表面構造を形成することで光エネルギー損失を抑制できることを初めて見出した。

ナノスケールでの物質低温反応
  バルクの平衡状態では二相分離系であるAl-Si系並びに、直接半導体として期待されるFe-Si系を例に金属ナノ構造とアモルファス(a-)Siの低温反応の研究を行っている。Al-Si系ではa-Siの低温結晶化によるフォトルミネッセンスを観測した。Fe-Si系ではFeのナノ構造の大きさに依存して低温で鉄シリサイドが形成されることを見出した。

担当   助教授   石黒  孝

電子デバイス・光波エレクトロニクス工学大講座(臨界現象研究室)
 物質がある相から別の相に変化することを相転移という。相転移の際には、比熱等、様々な物理量が不連続に変化したり発散するなど、特異な振る舞いを示す。これらを臨界現象という。本研究室では、主として磁性体について、この臨界現象の性質を明らかにすることを目的としている。手法としては、解析的手法と伴に、モンテカルロシミュレーション等、コンピュータを用いた様々な数値解析的手法も用いている。
 その他、磁性体の持つ様々な性質の解明の研究も行っている。

1.磁性体における相転移
1.1 ランダム磁性体
  近年、相転移現象において、スピン間の相互作用等がランダムな値をとる、いわゆるランダム磁性体の研究が盛んに行われている。このような研究においては、系のランダム平均をとるのが非常に困難なため、解析的な成果は限られており、数値計算による研究が主流になっている。本研究室では、相互作用が互いに競合しているような磁性体モデル、及びランダム磁性体を単純化した±Jイジングモデルを中心に、ゲージ変換等を用いた解析的手法やモンテカルロシミュレーション、数値転送行列法等を用いた数値解析的手法を用いて、相転移における臨界指数の評価や相図の確立等の研究を進めている。また、強磁性相内での自発磁化やスピングラスオーダーパラメータの値を求め、ランダム磁性体における強磁性相の特徴を調べる研究も進めている。上記のような局在スピン系は、いわゆる多体問題としては最も単純化されたモデルであるので、その可解性や厳密解の研究にも興味を持っている。
1.2 修正モデル
  ランダム磁性体に対して、様々なサンプルの生成確率を変化させた修正モデルを提唱し、元のモデルとの比較から様々な解析結果を得ている。特に、強磁性相境界に関しては重要な知見が得られているが、さらなる結果を得るための研究を行っている。また、この手法をモンテカルロシミュレーションに適用し、ボンド分布に関する独特なシミュレーション手法を確立し、それを用いた研究も行っている。
1.3 エネルギー分布関数
  ランダム磁性体モデルの一つである±Jイジングモデルの局所エネルギーの分布関数について、ゲージ理論等を用いて、分布関数の持つ様々な性質を解析的に導出した。分布関数が興味深い性質を持つことは、数値的研究からも見出し、解析的・数値的両面から、その性質の解明を進めている。
1.4 比熱の異常性
  通常、物体のある部分の温度を上げれば、それにつれてその物体の他の部分の温度も上がるが、ランダム磁性体においては他の部分の温度が下がるという異常な性質を持つ場合があることを見出した。この性質は系がフラストレートしていることと密接な関係があることが判り、現在、ランダム性を持たないフラストレートした系について、その性質の詳細について研究を進めている。
1.5 薄膜磁性体の臨界現象
  一般に磁性薄膜の層を増やして行くと、その臨界温度は上昇する。以前、本研究室では、強磁性体モデルについて、臨界温度と膜厚との関係を、shift exponentの値の評価等から詳細に調べた。現在、ランダム磁性体についても同様な研究を行っている。

2.量子スピン系の基底状態
  量子性が重要となってくる様な磁性体においては、相転移現象を論ずる以前にその基底状態の性質すらはっきりと解明できていないものが多く存在するのが現状である。本研究室では、フラストレートした量子スピン系を中心に、高温超伝導と関連のある、いわゆるJ1J2モデルの基底状態におけるネール状態の存在と基底状態波動関数におけるMarshall条件の関連等の研究をハミルトニアン行列の直接対角化を用いて研究中である。又、Dimer状態と呼ばれる特殊な状態が真の基底状態となる様な磁性体の研究、及び量子モンテカルロ法を用いた有限温度における種々の物理量の振る舞い、長さのコントロールにより、磁気的性質がコントロールできる(dimer-Haldane転移を行う)ような磁性鎖の開発に関する基礎的研究も行っている。

・H. Kitatani and A. Sinada, J. Phys. A 33(2000) 3545-3554.
・H. Kitatani, T. Chino and H. Ohya, J. Phys. A 36 (2003)4509-4518.

担当   助教授   北谷 英嗣
URL:http://kitacom11.nagaokaut.ac.jp