NUT統合報告書2021_DB
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31 新たな光学材料として注目されているメタマテリアルは、電磁波の波長以下のサイズの金属構造(スプリットリング共振器:SRR)をアレイ状に並べて作製されますが、一般にSRRは基板上に密着された状態で加工されるため、SRRの形やサイズで決まるメタマテリアルの特性を後天的に制御することは困難です。そこで、リング状光格子と呼ばれる特殊な光ビームを用いて、金属微粒子を光学的にトラップ(光ピンセット)し、浮遊するSRRを形成する手法を考案しました。リング状光格子は環状に分布した周期構造を有し、そのパターンの回転制御によりトラップ粒子の位置を動的に制御することが可能で、これによりSRRのサイズや状態を動的に制御できると期待されます。 これまでに、リング状光格子を用いた独自の光ピンセット装置を構築し、微粒子のトラップと回転制御に成功しました。今後金属微粒子のアレイ状トラップによる浮遊型メタマテリアルの光形成へと展開していきます。 脱炭素社会を構築するためには再生可能エネルギーを使いやすくする必要があります。具体的には太陽光発電、風力発電で得られる電力の平準化に必要で、大型蓄電池が期待されています。電気自動車などに搭載されるリチウムイオン電池ですが機能が格段に向上した一方で、安全性と原材料資源の価格高騰といった課題が顕在化しています。ナトリウムイオン電池はポストリチウムイオン電池の候補です。ナトリウムは無尽蔵な資源ですが、イオン伝導性やエネルギー密度に課題があります。私たちの研究グループではガラスの結晶化による複合セラミックス(結晶化ガラスという)を用いた機能性材料の創製に取り組んでおり、産学連携で低温で駆動する全固体電池の試作に成功しました。ガラスは通常固体としてふるまいますが、ガラス転位温度を超えると流動性を示します。我々はこの流動性を活用して、酸化物系で困難であった固体電解質と正極活物質との接合を達成し、革新電池の構築に向けて日々研究を推進しています。物質材料工学専攻本間 剛 准教授電気電子情報工学専攻坂本 盛嗣 准教授リング状光格子群を利用した多点環状光ピンセットによる動的メタマテリアルの光形成とその電磁場応答の解明ガラスの結晶化を活用したレアメタルフリー全固体電池の創製HONMA TSUYOSHISAKAMOTO MORITSUGUINGENIOUS夢のある独創的研究

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