NUT統合報告書2021_DB
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夢のある独創的研究32 現時点では国や企業から研究助成金を得られにくいが、面白い夢のある独創的な研究。そんな研究を大学で支援しました。強み・特色のある研究分野の推進の他、将来的な未到達領域分野への開拓に繋がる基礎研究、その一部を紹介します。 エンジンの熱効率向上は、自動車の燃費改善や環境負荷低減に有効な方法です。このため、ピストンやターボチャージャーの軽量化が進められており、密度の低いアルミニウムやマグネシウムが注目されています。一方、これらの金属材料は200℃以上の温度域で大きく強度が低下してしまうため、耐熱性の向上が必要と考えられていました。本研究課題では、軽量な金属元素であるアルミニウム、マグネシウム及びカルシウムのみを利用した耐熱金属間化合物の創製に取り組みました。これらの元素からなる金属間化合物は、500℃の高温下でもほとんど塑性変形を生じないことがわかりました。また、一般的に金属間化合物は脆いことが特徴で、検討材料もビッカース圧子の押込み時には容易に割れが生じます(図左)が、熱処理により第二相を形成させることで、脆さを改善できることも確認しました(図右)。 樹木バイオマス成分のリグニンは、地球上でもっとも豊富に存在する芳香族資源です。脱炭素社会の構築に向けてリグニンを化学工業リソースとして利活用する技術の開発と社会実装が求められています。 芳香族高分子であるリグニンを化学処理により分解すると様々な低分子芳香族化合物が生産されます。私たちはこれまで、リグニン由来の芳香族化合物を分解できるバクテリアの代謝システムを明らかにし、得られた遺伝子資源を活用して高機能性ポリマーの原料化合物を生産する微生物システムを開発してきました。現在、リグニン由来の芳香族化合物からのポリマー原料化合物生産量や速度を評価できるバクテリアセンサーの開発に取り組んでいます。本センサーを利用した微生物スクリーニングによりポリマー原料の生産能力が高い菌を獲得することで発酵生産システムの改良を加速し、リグニンからのポリマー原料生産技術の早期社会実装を目指します。生物機能工学専攻上村 直史 助教産学融合トップランナー養成センター中田 大貴 特任講師軽量金属元素で創る耐熱金属間化合物バクテリアセンサーで加速する樹木バイオマスからのポリマー原料発酵生産KAMIMURA NAOFUMINAKATA TAIKIRESEARCH

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