マイクロ流体制御×ナノポアの融合技術で新型センサを開発-簡易診断技術への応用に期待-
2025.09.05
ポイント
- マイクロ流体デバイス(注1)とプローブ型脂質二分子膜形成システム(注2)を組み合わせた生体ナノポアセンサ(注3)を提案
- 標的分子検出に必要なサンプルの前処理から分子検出まで同一のデバイス内で実施
- 微量の血液や唾液などを使ってその場で病気を診断できる技術への応用が期待
概要
本学技学研究院機械系の庄司観准教授、大学院工学研究科機械創造工学専攻の銭彦尭(修士課程大学院生、2022年度修了)、大学院工学研究科先端工学専攻材料工学分野の岡田瞬(博士後期課程3年大学院生、米子高専出身)の研究グループは、サンプル調製機能を有するマイクロ流体デバイスとマイクロ電極を、水溶液と脂質溶液が層となった浴溶液に挿入することで、脂質二分子膜を形成可能なプローブ型脂質二分子膜形成システム(参考文献①)を組み合わせたナノポアセンシングプラットフォームを開発しました。本ナノポアセンシングプラットフォームを用いることで、標的分子検出に必要なサンプルの前処理から分子検出まで同一のデバイス内で実施可能となるため、ナノポアセンシングを用いた自宅や診療所レベルで対応できるPoint of Care(POC)診断の実現に繋がります。
用語解説・参考文献
注1)マイクロ流体デバイス
微細加工技術によりマイクロメートルスケールの流路が構築されたデバイスで微小流体を制御・操作することができる。
注2)プローブ型脂質二分子膜形成システム
先端が親水性のマイクロ・ナノ電極を脂質溶液と水溶液が層となった浴溶液に挿入することで電極先端に脂質二分子膜を形成することが可能なシステム。
注3)生体ナノポアセンサ
脂質二分子膜に再構築されたポア形成膜タンパク質を用いたセンサ。ポア形成膜タンパク質によって構築されたナノポアと標的分子の相互作用によるイオン電流の変化から標的分子を検出する。
①K. Shoji, R. Kawano, and R. J. White, "Recessed Ag/AgCl Microelectrode-Supported Lipid Bilayer for Nanopore Sensing," Anal. Chem., vol. 92, no. 15, pp. 10856-10862, 2020.
論文情報
論文タイトル:Nanopore Analysis of Microfluidically Prepared Samples Using a Probe-Type Lipid Bilayer System
著者名:Yanyao Qian, Shun Okada, and Kan Shoji
掲載誌:Microchemical Journal
掲載日:2025年8月27日
DOI:https://doi.org/10.1016/j.microc.2025.115084
研究内容の詳細(プレスリリース本文)
本学の研究者
機械系 庄司観 准教授
大学院工学研究科修士課程機械創造工学専攻 銭彦尭さん(大学院生、2022年度修了)
大学院工学研究科博士後期課程先端工学専攻材料工学分野3年 岡田瞬さん(大学院生、米子高専出身)
研究者のコメント
「マイクロ流体デバイスと生体ナノポアセンサを組み合わせたセンサシステムを開発することで、微小サンプルから迅速・簡便に生体分子を検出することが可能となりました。本システムが新たな病気診断技術として普及されるように頑張ります。」(庄司准教授)