1-オクテンを選択的に3つだけつなげる新しいチタン触媒を開発-化学原料の効率的な合成に向けた新技術-
2025.10.06
ポイント
- 正電荷を持つ新規配位子注1を導入したチタン錯体触媒注2を開発。
- 1-オクテンを選択的に3つだけつなげる新しい触媒反応を実証。
- 化学原料の生産コストの削減に貢献する技術基盤を開拓。
概要
本学技学研究院物質生物系の戸田智之助教らの研究グループは、新たに独自設計したチタン錯体触媒を開発し、1-オクテンという小さな分子を「選択的に3つつなげる(トリマー化注3)」反応を実証しました。これまで、重合反応では分子の長さや形を思い通りに制御するのは難しいとされてきましたが、本研究により狙った長さに選択的に合成できる新しい道が開かれたことになります。今回の成果は学術誌 Chemical Communications に掲載され、論文の図が同誌の外側裏表紙(outside back cover)に採用されました。

Image reproduced by permission of Tomoyuki Toda et al. from Chem. Commun. Published by the Royal Society of Chemistry.
用語解説
(注1)配位子(はいいし):金属の"手"のように働いて、金属にくっつく(結合する)分子。大きさや金属に結合する強さにより、触媒の性質を大きく左右する。
(注2)触媒(しょくばい):化学反応を速くしたり、ある特定の方向に進めやすくしたりする物質。触媒自体は消費されず、何度も繰り返し同じ反応を起こすことができる。化学や材料の研究だけでなく、工業的な生産プロセスでも非常に重要。
(注3)トリマー化:同じ分子が3つつながって新しい大きな分子になる反応。三量化反応。
論文情報
論文タイトル:Synthesis and structure of titanium complexes with phosphonium-bisphenolate ligands "{P+[O2]}H2" and their catalytic trimerization of 1-octene
著者名:Tomoyuki Toda, Yu Cheng and Katsuhiko Takenaka
掲載誌:Chemical Communications, 2025, 61, 15594.
掲載日:2025年9月2日
DOI:https://doi.org/10.1039/D5CC04541J
研究内容の詳細(プレスリリース本文)
本学の研究代表者
研究者のコメント
「金属にどのような配位子(有機化合物)を組み合わせるかによって、触媒の性能や反応の選択性が大きく変わる点に、有機金属・錯体化学の魅力があります。今回の成果は、配位子設計の工夫が新しい反応制御につながることを示したものであり、この分野ならではの面白さを改めて感じられる研究となりました。」(戸田助教)