国連アカデミック・インパクトアクティビティリポート
2022アクティビティリポート
UNAIの10原則の少なくとも1つ、および/または持続可能な開発目標の1つ以上に取り組む活動やプロジェクトについて
長岡技術科学大学は国連アカデミック・インパクトの活動に賛同し、10原則のうち特に4、5、9の3つの原則を支持する。本学は原則9に強くコミットし、SDGsの達成に貢献する。
SDG9(強靭なインフラの構築、包摂的で持続可能な産業化の促進、イノベーションの促進)に対するUNAIハブの重要な責任を認識し、SDGsとSDG9の統合目標を達成するために、以下の3項目の活動やプロジェクトを実施した。
1.高等教育機関間の連携及び教育機関と国連との連携の促進
ユニツインネットワーク「GIGAKU SDG Network 」申請採用
本学が中心となって申請した「技学SDGネットワーク(GIGAKU SDG Network)」が「The UNITWIN Network for Engineering Education towards Sustainable Pathways」としてユニツインネットワークに認定された。このネットワークは、SDGs貢献と実践的技術者育成の理念に賛同した6か国9機関のメンバー及びオブザーバーの企業とで形成され、工学教育の発展と、社会に貢献できるイノベーションを興す研究・技術開発を推進する。
国際会議7th STI-Gigakuの開催
本学は11月18-19日に、国際会議「The 7th International Conference on “Science of Technology Innovation” 2022(7th STI-Gigaku 2022)」をハイブリッド形式により開催した。SDGsの解決につながる活動や研究成果を、ターゲットとするSDGsの番号を示して発表を行ったリサーチプレゼンテーションには、国内外から150件を超える発表と8か国から300人を超える参加があり、優秀発表者には企業冠賞が贈られた。また、高専生を対象とした本学学生との座談会「GIGAKU Talk」では、専攻や出身の異なる本学学生との有意義な意見交換が行われた。本国際会議はSDGs達成に向けた重要な研究交流の機会となった。
UNAI SDGハブ大学間の連携
マウントケニア大学(ケニア)主催の第2回 平和・安全保障及び社会的企業に関する国際会議が開催された。本会議は、平和、安全保障、社会経済及び政治的発展を定着させるために必要な最善のパラダイムに焦点を当てることを目的としており、本学の勝身UEAが発表者として参加し、ゴール9ハブ大学の観点から、技術者、安全、持続可能な開発をキーワードとして本学の国際産学連携について説明した。
UN100イニシアチブ・イベントへの参加
国際平和デーである9月21日 (水曜) にボストンフォーラムが主催となるUN100イニシアチブ・イベント「グローバルな啓蒙活動の時代: 平和のための技術」が開催された。本会議では、世界の平和と安全を維持するための技術活用のアイデアについて議論が行われ、本学の勝身UEAが発表者として参加し、ゴール9ハブ大学として、平和のための技術として技術者倫理やSDG9について発表した。
国連システム学術評議会(ACUNS)の年次総会2022に出席
国連システム学術評議会(ACUNS)の年次総会内のパラレルセッションとして開催された「高等教育を通じたSDGsの推進:国連アカデミック・インパクト(UNAI)の事例」において、UNAI SDGsハブ大学から本学(UNAI SDG9ハブ大学)とデモンフォート大学(UNAI SDG16ハブ大学)の2校、UNAI加盟大学から1校(カリフォルニア大学デービス校)が招待を受け、パネリストとして参加した。本学からは、レジリエントな技術を活用したインフラ構築に対する取組や独自の実践教育など、SDG9を軸とする本学の特色ある教育研究活動を紹介した他に、開発途上国における水問題の解決など、SDG9以外の目標達成にも貢献していることについて説明した。
2.SDGs教育の国内外への展開と実践
JSTS 2022の開催
9月12日から5日間に渡り、GIGAKU SDG Networkメンバーである国立高等専門学校機構主催、長岡技術科学大学・豊橋技術科学大学共催でJSTS 2022(Japan Seminar on Technology for Sustainability 2022)を開催した。JSTS2022では、「超スマート社会とクリーンエネルギー実現」をテーマとして実施された。本会議には、本学教員が講師として参加するとともに、本学学生がファシリテーターとして参加した。
SDGs Webinar 2022の開催
10月1日から12月10日にかけて、福島工業高等専門学校主催、長岡技術科学大学・豊橋技術科学大学共催で「SDGs Webinar 2022」を開催した。福島高専生及び両技科大生を対象に、「アントレプレナーシップ(起業家精神)」をテーマにしたオンライン形式のワークショップを行った。シリコンバレーで起業した日本人や本学教員等が講師として参加した。各グループにわかれてSDGsを取り入れたビジネスモデルの作成に取り組み、最終日には成果発表会を行った。SDGsの指標を掘り下げて考えるというワークショップを実施するなど、参加学生はSDGsについて大いに理解を深めた。
SDGプロフェッショナルコース留学生への奨学金支給
本学のユネスコチェアプログラム「技学SDGインスティテュート」を構成するSDGプロフェッショナルコースの社会人留学生に対し、りそな銀行グループSDGs私募債からの寄附金(約730万円/年)を原資とする奨学金を支給した。このことは発展途上国出身の学生に対する先進的・実践的な工学教育とSDGs教育の機会の拡大に寄与した。
2022年度英語多読マラソン
「2022年度英語多読マラソン」の取り組みにおいて、4月~12月の9カ月間で30万語の読量に到達した2名の方を対象に、表彰式を行った。継続して英語学習に取り組む姿勢と努力に対して敬意を表して、武田雅敏副学長から表彰状と副賞が授与された。
「持続可能な発展のための国際基礎科学年(IYBSSD2022)」の協賛機関として登録
6月30日より開始した国連の「持続可能な発展のための国際基礎科学年(IYBSSD2022)」(The International Year of Basic Sciences for Sustainable Development)の趣旨に賛同し、協賛機関として登録した。IYBSSD協賛機関として、基礎科学と持続的発展との関係に焦点をあてたイベントや情報発信を行うことで、「人類にとっての基礎科学の価値の高さ」と、「持続可能な発展を達成し、世界中の人々の生活の質を向上させるためには、基礎科学に対する世界的な認識を高め、教育を強化することが不可欠である」ことを学内外に周知していく。
3.SDGsの普及啓発活動
学生SDGsプロモーターの任命
本学は、SDGs推進のための広報活動やイベントを企画・実施するため、学生組織である学生SDGsプロモーターを設置している。7月に学部学生から社会人学生まで幅広い年代の留学生13名、日本人学生13名の多様な学生計26名を第3期学生SDGsプロモーターに任命した。プロモーターは、4月18日にSDGsゴール12に焦点を当てたワークショップを開催した。また、8月7日に見附市が企画したイベントにSDGsブースを出展、10月2日に放送事業者が企画したイベントにワークショップを出展、10月30日に長岡市が企画したイベントにSDGsブースを出展するなど、地域におけるSDGs推進の機運を醸成した。
SDGs教育ゲームの新規開発と無償公開
企業や教育関係者、市民にSDGsについて認知してもらうため、本学は、子どもから大人まで楽しみながら学べるSDGs教育ゲームを開発し、webサイトで無償公開している。2022年中はSDGs教育ゲームを用いたワークショップを、市や放送事業者等が企画する様々なイベントで出展し、多くの市民にSDGsについて知っていただく機会を提供できた。
長岡技術科学大学・長岡工業高等専門学校SDGs講演会
2月21日に、長岡工業高等専門学校との共催により、SDGsとは何か、SDGsを実現するには何が必要となるのかを市民や企業に分かりやすく伝えるためのSDGs講演会を開催し、120人以上が参加した。本講演会では、「持続可能な循環型社会」をメインに考え、ゲストスピーカーをお呼びし講演していただいたほか、本学教員とのパネルディスカッションを行い、長岡市で持続可能な循環型社会を実現するためにはどうすればよいか、課題や現状について議論した。
産学官金共催によるSDGs講演会
11月29日に、産学官金の各機関との共催によりSDGs講演会を開催し、90人以上が参加した。本講演会では、「地域・企業が持続的に成長するための指針」について講演を通じて示していただき、企業や地域の皆様と共に持続可能な社会の実現に向けた取組を推進する契機にすることができた。
「鉄の生まれ変わり・学びプロジェクト」を開始
本学SDGs推進室は企業やNPO法人と連携し、「鉄の生まれ変わり・学びプロジェクト」を開始した。「鉄」というとても身近な材料のリサイクルを多くの方々に知っていただく活動として開始したもので、プロジェクトの一環として4月10日に鉄のリサイクルに関わる工場見学を実施した。
新潟日報文化賞を受賞
本学のSDGs推進室は、SDGsの推進に関する新潟県内外での啓発活動を初等中等教育機関の児童生徒や一般市民等に対して積極的に行うだけでなく、県内の自治体や産業界に対しても各種講演会やイベント、ワークショップ等によりSDGsに則した経営や行動を行うことの大切さを説明し、具体的な例や先進的な試みを紹介する活動を継続的に実施している。こうした「新潟県内におけるSDGsの啓発活動」の業績が認められて、新潟日報文化賞を受賞した。
「佐渡島 天地人サイエンスプロジェクト2022」にブースを出展
7月30-31日に、「佐渡島 天地人サイエンスプロジェクト2022」にブースを出展した。本プロジェクトは佐渡島の子どもたちにサイエンスを学んでもらうためのものである。ブレーカー水没・復旧実験を通じてSDGsや水害と電気に関する知識や行動への理解を深めてもらうことができた。
キッズフェスティバル2022
10月2日、新潟県内の放送事業者からの依頼を受け、キッズフェスティバル2022においてSDGs教育教材・ゲームを用いたワークショップを実施した。家族連れを中心とした多くの方から本学のブースにお立ち寄りいただき、様々なコンテンツを体験していただくことで、多くの方からSDGsについて知っていただく機会を提供できた。特設ステージのSDGsパートでは、本学が企画した対決型ゲームを実施し、楽しみながらSDGsについて学ぶことができた。
ラジオ番組を介したSDGs周知活動
新潟を代表する放送局のラジオ番組にレギュラー出演し、「SDGs de はぐくむコラム」にて記載した内容を同番組にて紹介した。これまでに「先入観・固定観念・偏見を捨てよう!」「バックキャスティング思考で世界を変える!?」「つくる責任 つかう責任 あなたの責任!?」「英語はSDGs達成に貢献するための道具!?」の4つのコラムが紹介され、子育て中のリスナーに対し、こどもたちの未来のためになるSDGsをべースとした話題、暮らしのヒントと等を提供した。
持続可能な開発目標の達成に役立つ可能性のある、長岡技術科学大学で現在行われている学術研究
JST(国立研究開発法人科学技術振興機構)の「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」の地域共創分野・本格型に採択
「“コメどころ”新潟地域共創による資源完全循環型バイオコミュニティ拠点」として、本事業に採択された。コメの価格下落や農業従事者の高齢化・後継者不足といった地域の課題を解決するために、農家や米菓製造業者などを始めとする地域のステークホルダーとの間で「10 年後にありたい将来の姿(ビジョン)」について議論を重ねた。そのうえで、農家が安定的にコメ作りを続けていける環境、また生産されたコメを活用して製造業が付加価値の高い製品を生み出すことが重要であるとの意識を皆で共有し、地域全体が「田んぼ」とのつながりを意識して、地域の宝である「田んぼ」を守り続けるための研究開発を進めていく。
障害者の生涯学習支援活動
車いすに代表される障がい者スポーツ用具の研究・開発を通じて障がいのある人々への生涯学習支援活動に取り組んできた。障がい者らとの交流や意見交換に留まるのではなく、教育や社会生活といった幅広い分野における講演招へいや、高専との教育・研究連携を通じてアシスティブ・テクノロジー(AT)に関連する技術者・研究者の人材育成を目的とした障がい者と学生・教員・企業を含めた恊働教育の実践といった活動の展開にも貢献している。これらの活動は文部科学大臣表彰において、「障害者の生涯学習支援活動功労者表彰」を受賞した。(本研究の中心教員:塩野谷明 教授)
フェムト秒レーザ熱還元を利用した金属の3次元微細造形法の創製
各種センサやデバイスのプリント製造技術は、低環境負荷の簡易な製造方法として注目されている。我々の研究グループでは、フェムト秒レーザ熱還元を利用した金属の3次元微細造形法の創製に取り組んでいる。本技術は、金属錯体や金属酸化物ナノ粒子を原料インクとして用い、大気中でフェムト秒レーザパルスを照射することにより金属を析出・焼結させる。そのため、通常のリソグラフィや真空成膜法を組み合わせた多段階プロセスと異なり、真空フリー環境下で金属パターンを直接描画形成できる。このプロセスを様々な材料へ応用することで任意形状のデバイスのマスクレス製造の実現が期待できる。(本研究の中心教員:溝尻瑞枝 准教授)
メタンガスを作る微生物にとって最適な家を作る
嫌気性廃水処理(メタン発酵)プロセスは省エネルギーかつメタンガスを回収出来る創エネルギー型の有機性廃水処理技術である。また、生産されるバイオガスは再生可能エネルギーであることから、嫌気性処理プロセスの重要性はますます高まっている。この嫌気性廃水処理プロセスを安定的に運転するためには、メタンガスを作るメタン菌と、有機物を分解しメタン菌の餌を作る細菌を一緒に効率的に処理槽内に保持する事が重要である。
そこで、私共の研究グループでは、これらメタン菌を含む嫌気性処理に重要な微生物を効率的に保持できる微生物保持促進材を混合した微生物担体を開発した。(本研究の中心教員:幡本将史 准教授)
SDGs達成のための人工システム-人間相互作用デザインガイドライン
本研究の目的は、人工物のデザインにおいて戦略的にデザイン解の探索を行うためのガイドラインを提案することである。ガイドラインは、北島・豊田が開発した認知アーキテクチャ「実時間制約下のモデルヒューマンプロセッサ」による人間-人工物相互作用プロセスのシミュレーション結果に基づいて作成され,行動目標レベル、意識的行動・無意識的行動の協調レベル、知覚・認知・運動プロセス・記憶利用プロセスと外部環境との同期レベルの3つのレベルで構成される。ガイドラインの適用方法として、成功しているデザインをガイドラインに即して理解し成功要因を知る方法、人工物のデザイン解候補をガイドラインに従って絞り込む方法が示される。(本研究の中心教員:北島宗雄 特任教授)
地域防災実践研究センターを活用した防災・減災に関する研究成果の社会実装化
本学の地域防災実践研究センターでは、東京電力ホールディングス株式会社との共同研究により、汚水を浄化するウォーターチェンジャーを開発し、2022年に新潟県防災クラスター事業第1号製品として実用化された。このウォーターチェンジャーは、微生物の分解作用を用いた生物処理をソーラー駆動で行い、災害時に生活用の安全な水を提供する。昨年8月には100万人以上の人々が訪れる長岡まつり大花火大会会場の手洗い場に設置され、常に安全で綺麗な手洗い水を提供した。本学が目指すSDGs ゴール9の「持続可能かつ強靭なインフラ」を形成する取組の代表例になっている。
2021アクティビティリポート
UNAIの10原則の少なくとも1つ、および/または持続可能な開発目標の1つ以上に取り組む活動やプロジェクトについて
長岡技術科学大学は国連アカデミック・インパクトの活動に賛同し、10原則のうち特に4、5、9の3つの原則を支持する。本学は原則9に強くコミットし、SDGsの達成に貢献する。
SDG9(強靭なインフラの構築、包摂的で持続可能な産業化の促進、イノベーションの促進)に対するUNAIハブの重要な責任を認識し、SDGsとSDG9の統合目標を達成するために、以下の3項目の活動やプロジェクトを実施した。
1.高等教育機関間の連携及び教育機関と国連との連携の促進
技術連携説明会におけるSDGsオンラインセミナー
12月13日から17日の5日間に渡って開催された産学連携フォーラム「 技術連携説明会」内でSDGsオンラインセミナーを開催した。本セミナーには、国連アカデミック・インパクト(UNAI)、UNESCO及びUNAI SDGs世界ハブ大学のうち本学を含む8大学から10名が講師として参加し、英語で講演を行った。この講演を録画した動画には英語と日本語の字幕が付与され、セミナー終了後も視聴することが可能となっている。
【講演者】
- Mr. Omar Hernandez / UNAI (United Nations Academic Impact, U.S.)
- Ms. Rovani Sigamoneyns / UNESCO(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization, France)
- Dr. Jonas Richard A / SDG1(Kristu Jayanti College, India)
- Ms. Amy Malcolm / SDG4(The University of Auckland, New Zealand)
- Dr. Amira Yousif Badri / SDG5 (Ahfad University for Women, Sudan)
- Dr. Dimitrios Mavrakis / SDG7 (National and Kapodistrian University of Athens, Greece)
- Dr. Mwangi Peter Wanderi / SDG10(Mount Kenya University, Kenya)
- Dr. Amund Maage / SDG14(University of Bergen, Norway)
- Mr. Mark Charlton / SDG16(De Montfort University, U.K.)
- Dr. Mami Katsumi / SDG9(Nagaoka University of Technology, Japan)
国際会議6th STI-Gigakuの開催
10月22日に、国際会議「The 6th International Conference on “Science of Technology Innovation” 2021(6th STI-Gigaku 2021)」をオンライン形式により開催した。SDGsの解決につながる活動や研究成果を、ターゲットとするSDGsの番号を示して発表を行ったリサーチプレゼンテーションには、国内外から150件を超える発表と14か国から300人を超える参加があり、優秀発表者には企業冠賞が贈られた。また、本学学生と参加者との交流の場となる「なんでも座談会」を開催し、分野の垣根を越えた有意義な意見交換が行われた。本国際会議はSDGs達成に向けた重要な研究交流の機会となった。
UNAI SDGハブ大学間の連携
7月に日本の出版社が刊行した、高等教育におけるSDGsへの取組を特集したムック本に、本学の呼びかけによりUNAI SDGハブ大学(SDG1,3,4,5,8,9,14,16)が共同で寄稿を行った。コロナ禍におけるハブ大学の工夫を凝らした取り組みを紹介することで、世界の高等教育の現状を知る機会の提供につながった。
SDG1主催の会議でのスピーチ
Kristu Jayanti College、Bangalore(SDG1)は、貧困撲滅のための国際デーを記念する一環として、2021年10月17日に「貧困の連鎖を断ち切るための国際会議:課題と前進(International Conference on Breaking the Cycle of Poverty: Challenges & Way Forward)」を開催した。 基調講演者の一人として、UNAIのRobert Lawrence Skinner氏、Omar Hernandez氏とともに勝身麻美UEAが出席し、SDG9についてスピーチを行った。


2.SDGs教育の国内外への展開と実践
GIGAKU SDG Networkの活動
SDGs達成と実践的工学教育を柱とする工学教育プログラムの世界的な高等教育機関ネットワーク「GIGAKU SDG Network」によるUNITWIN申請後2回目の開催となる年次会合「5th Panel on GIGAKU Education」を1月26日に開催した。6カ国10機関のメンバーがUNITWINの認定やネットワーク発展に向け活発な議論を展開した。また、「SDGs達成に向けた科学技術教育の理解増進と普及啓発」を目的とした活動の実績が認められ、5月に本学の勝身麻美UEAらが、科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞を受賞した。
JSTS 2021の開催
9月から全5回に渡り、GIGAKU SDG Networkメンバーである国立高等専門学校機構主催との共催によりJSTS 2021(Japan Seminar on Technology for Sustainability 2021)を開催した。JSTS2021では、講義をとおしてSDGsの基礎を学び、それをふまえて少人数のチームでグループワークを行なった。グループワークでは、SDGs17の項目に沿った身近な視点での問題提起を行い、その解決策を考え、ドキュメンタリー映画(ショートムービー)を作成した。本会議には、本学教員が講師として参加するとともに、本学学生がファシリテーターとして参加した。
SDGs Webinar 2021の開催
11月6日(土曜)から12月18日(土曜)にかけて、福島工業高等専門学校主催、長岡技術科学大学・豊橋技術科学大学共催で「SDGs Webinar 2021」を開催した。福島高専生及び両技科大生を対象に、「アントレプレナーシップ(起業家精神)」をテーマにしたオンライン形式のワークショップを行なった。シリコンバレーで起業した日本人や本学教員等が講師として参加した。各グループにわかれてSDGsを取り入れたビジネスモデルの作成に取り組み、最終日には成果発表会を行なった。SDGsの指標を掘り下げて考えるというワークショップを実施するなど、参加学生はSDGsについて大いに理解を深めた。
SDGプロフェッショナルコース留学生への奨学金支給
本学のユネスコチェアプログラム「技学SDGインスティテュート」を構成するSDGプロフェッショナルコースの社会人留学生に対し、りそな銀行グループSDGs私募債からの寄附金(約490万円/年)を原資とする奨学金を支給した。このことは発展途上国出身の学生に対する先進的・実践的な工学教育とSDGs教育の機会の拡大に寄与した。
地域レジリエンス向上を目的としたモデル授業
10月8日に、見附市内の小学校において、地域の災害対応力の向上を目指して開発した防災教材を活用したモデル授業を実施した。東京電力ホールディングスとの包括連携協定に基づく「SDGsや防災に関わる人材育成のための教育プログラムの構築」プロジェクトの一環として、災害発生時の全体最適な行動を児童が学べるような実験キットを用いた授業を行った。
3.SDGsの普及啓発活動
学生SDGsプロモーターの任命
SDGs推進のための広報活動やイベントを企画・実施するため、学生組織である学生SDGsプロモーターを設置している。7月に学部学生から社会人学生まで幅広い年代の留学生11名、日本人学生10名の多様な学生計21名を第2期学生SDGsプロモーターに任命した。プロモーターは、動画の作成やニュース番組を通じて活動内容の周知を図るとともに、9月4日に長岡市地球温暖化講座、10月9日に海岸清掃×学び、10月30日にSDGs活動紹介ブースの出展、11月3日にSDGs教育教材を用いたワークショップといった活動を実施した。また、11月にプロモーターは国連本部広報局UNAIチームのMr.Kosuke TERAIとオンライン対談を行った。
SDGs教育ゲームの新規開発と無償公開
企業や教育関係者、市民にSDGsについて認知してもらうため、本学は、子どもから大人まで楽しみながら学べるSDGs教育ゲームを開発し、webサイトで無償公開している。5月には新たに謎解き型SDGsゲームを開発し、新規公開するとともに、多くの市民が参加するイベント「Hakko trip」や大型商業施設で開催されたイベントに出展した。2021年中にはこれらSDGs教育ゲームを有名企業の社内研修、小学校から大学までの様々な教育機関の授業などへ80件以上提供した。
長岡技術科学大学・長岡工業高等専門学校SDGs講演会
2月18日に、長岡工業高等専門学校との共催により、SDGsとは何か、SDGsを実現するには何が必要となるのかを市民や企業に分かりやすく伝えるためのSDGs講演会を開催し、120人以上が参加した。本講演会では、新潟ではなじみの薄い未利用魚の利活用に向けた活動や大規模洋上風力発電計画と鳥の共存に向けた取組、地元企業のSDGs関連活動、県内の中学校が取り組むSDGs授業、本学のSDGsへの取組の紹介等、新潟県内でSDGs貢献活動に取り組む様々な業種の方より講演していただいた。
SDGs意識調査
SDGsが市民にどの程度浸透しているか、また、上記のような本学のSDGsの普及啓発に向けた取組がどのような効果を及ぼしたかを調査するため、昨年に引き続き、長岡市の中心部で市民に対するSDGs意識調査を実施し、結果を本学webサイトで公開した。SDGsの意味を知らない市民の割合は減少しており、SDGsの取組に関心のある市民も増加しているため、本学SDGsの普及啓発活動は一定の成果を上げていると思われる。一方、依然として2割にのぼる市民はSDGsの意味を知らないため、アンケート結果を分析しより効果的な方法でSDGsの普及啓発活動を図りたいと考えている。
新潟県内の商工会議所へのSDGs講義
新潟県内の商工会議所は、新潟の将来像や経済発展の方向性を探るべく、中小企業・地域企業に対して、SDGsへの取り組み支援を行っている。本学では地域社会におけるSDGs達成に向けた機運の醸成を目的に、県内4つの商工会議所に対して講師を派遣し、SDGsの基礎を学ぶ機会を提供した。
経営士全国研究会議における講演およびパネルディスカッション
10月31日に開催された「第54回経営士全国研究会議新潟大会」の分科会において、本学のSDGs活動とSDGsに指向した研究紹介を行った。また、経営士、長岡市内企業及び本学の教員と学生がパネラーとして「地域におけるゴール9促進のための経営の役割」に対するパネルディスカッションを行った。
佐渡市との包括連携協定の締結
本学は7月5日、佐渡市と包括連携協定を締結した。佐渡市とはSDGsを念頭に水工・農工連携を進めていく他、本学の海外オフィスを活用し、佐渡市の企業の海外進出も支援する等、SDGsの推進や産業振興、人材育成に向けて相互協力していく。
海岸清掃×学び
10月9日、一般市民へのSDGs普及を目指した活動の一環として「海岸清掃×学び」を行った。2回目の清掃実施となった今回は、海岸清掃をしながら海について・科学について学ぶことをコンセプトに実施した。実践を交えながら学ぶことで参加者は環境への影響に対する理解を深めることが出来、SDGsに対する理解促進につながった。
KOSEN Open Innovation Challenge powered by JICA 2021の共催
独立行政法人国際協力機構(JICA)との共催により「KOSEN Open Innovation Challenge powered by JICA 2021」を開催した。KOSEN Open Innovation Challenge では、水環境問題に精通している本学教員らが中心となり、日本とアフリカの両国が抱える社会課題の解決策を募り、優秀な提案に対してはプロトタイピングの支援を実施した。また、本学から講師を派遣し、SDGs関連の講義を行った。


持続可能な開発目標の達成に役立つ可能性のある、長岡技術科学大学で現在行われている学術研究
DXを有効活用した先進的研究・技術開発の推進
SDGs達成に向けてDXを有効活用した先進的研究・技術開発を推進し、その社会実装化を通じて国内外の産業集積地域の持続的発展や地域の魅力作りにつなげることを目指し、IoT技術を活用した研究機器の遠隔利用の実証実験を重ねた。研究機器のリモート化・スマート化の先進事例として全国的に注目され、研究機器の遠隔利用による国内外の連携を飛躍的に増加することが期待される。
未利用木質バイオマスであるリグニンからの高機能材料の生産システムの開発
持続的な社会の発展に資するものとして、植物の主要成分であり地球上で最も多量に存在する芳香族資源である「リグニン」およびその関連化合物が期待されている。リグニンとその関連分野に関して独創的で優秀な研究を行った上村直史助教は第1回リグニン学会奨励賞を受賞した。本研究は脱炭素社会の構築に貢献することが期待される。(本研究の中心教員:上村直史 助教)
効率的に産業用酵素を生産する技術の開発
化石資源の使用・廃棄に伴う温室効果ガスの排出による地球温暖化と、化石資源の枯渇という大きな問題に直面している。この問題の解決に向けて、最も世界に多く存在する資源として知られている植物バイオマスからものづくりを行うバイオファイナリーが注目されている。この達成に向けて、本学の小笠原渉教授らの研究グループは、バイオマスとして最も賦存量が多いセルロースを効率的に利用していくために重要な酵素の生産性を大きく向上させる技術を開発した。
本研究により開発された技術は、産業用酵素、特にバイオマス糖化酵素の製造技術に応用でき、バイオリファイナリーの加速に繋がると期待される。(本研究の中心教員:小笠原渉 教授)
地域防災センターを活用した防災・減災に関する研究成果の社会実装化
本学は自然災害に対する防災・減災に関する技術の実践研究を産学官の連携により推進し、技術革新の基盤を創成するとともに、SDGsの達成に向け自然災害に強いまちづくりに貢献することを目的として、「地域防災実践研究センター」を設立した。本センターでは、本学の得意とする水処理技術や電力変換・エネルギー関連の技術を使い、災害対応技術の実践研究やSDGs、防災の人材育成を行っていくとともに、新潟県が主催する「防災産業クラスター」のプラットフォームにおいて産官学連携による新技術の社会実装化、地域防災推進を図る。
災害対応ロボットの開発
本学は、災害時における人命救助や被害の拡大防止等に使われる災害対応ロボットの開発で世界を先導する存在であり、レスキューロボット競技大会で世界でも上位に入った実績がある。本学のレスキュー工学研究室と地元企業の合同チームNuTech-Rはレスキューロボットを核としたロボットの産業化へ挑戦しており、国連アカデミック・インパクト(UNAI)webサイトに掲載された。
お問い合わせ
大学戦略課 国際・高専連携戦略室 プロジェクト企画係
〒940-2188 新潟県長岡市上富岡町1603-1
電話:0258-47-9021 FAX:0258-47-9283