ダイヤモンドによる究極半導体の実現に向けて – 會田 英雄

ダイヤモンドといえば宝石の王様です。その輝きに目を奪われた方も多いことと思います。炭素からなるダイヤモンドは、人工的にも合成が可能です。微粒子や2~3mm程度の小片が大量生産され、物質上で最も硬いという特性を活かし、研磨剤やバイト工具などに広く利用されてきました。高硬度材料の精密加工には、無くてはならない存在です。

最近では、安定製造可能なダイヤモンドのサイズが10mm程度まで拡大されています。1カラットのラウンドブリリアントカットダイヤモンドの直径は約6.5mmであることから、宝飾の世界にも、いよいよ人工ダイヤモンドの流通が始まりました。「ラボグロウンダイヤモンド」として鑑定書が付き販売されます。天然に比べ安価という理由だけではなく、採掘の過酷労働や環境破壊と無縁な「エシカルジュエリー」としても注目を集めています。

そして近未来アプリケーションには、電力制御に関わるパワー半導体分野での活用があります。パワー半導体の高効率化は、地球温暖化ガス排出量の削減に効果を発揮します。現在主流のシリコンデバイスは、今後、炭化ケイ素や窒化ガリウム次世代デバイスへと置換えられていきますが、さらに将来にはダイヤモンドパワー半導体があり、既存デバイス比で数千~数万倍もの究極的な高性能化が期待されます。ただし本格的産業利用には、今よりも圧倒的に大きな(少なくとも100mm)のダイヤモンドが必要です。
私の研究室では、ダイヤモンドのさらなる大型化に向けて研究を加速しています。ダイヤモンド成長時には応力蓄積が起こり、最終的にクラックが発生します。大型化が困難な理由です。成長様式を理解し、応力制御を可能とする革新的な成長技法の開発を進めています。また、ダイヤモンドの半導体利用には、ダイヤモンド表面の原子レベル無擾乱仕上げが必須です。化学的に安定で高硬度なダイヤモンドに対する、高効率超精密加工技術の開発にも取り組んでいます。

ラウンドブリリアンカット人工ダイヤモンド宝石(大きさはいずれも約0.5カラット)
気相成長法による人工ダイヤモンド成長方法

會田 英雄 Aida Hideo

機械系 准教授

  • 2017年6月 - 現在長岡技術科学大学 准教授
  • 2016年11月 - 2018年3月九州大学 グローバルイノベーションセンター 客員教授
  • 2015年4月 - 2016年3月九州大学 産学連携センター 特任教授
  • 2013年4月 - 2015年3月九州大学 産学連携センター 特任准教授 

機械系 准教授 會田 英雄