次世代のエネルギー源として期待される核融合による発電システムの実現を目指す – 菊池 崇志

Q. 核融合発電とは何ですか?

重水素や三重水素といった軽い水素などの原子核が合体して、ヘリウムなどの重い原子核になる反応を“核融合”といいます。このときに発生するエネルギーを回収して電気に変えることで発電を行う方法です。

Q. メリットは何でしょうか?

燃料となる重水素が豊富にあることです。重水素は海水中にほぼ無尽蔵に存在するため、海に囲まれた日本にとって特に都合がいいです。地球温暖化ガスや原子力発電で生じる高レベル放射性廃棄物を出さないほか、高出力の電力を安定供給できる特長もあります。

Q. どのようにして実現するのですか?

燃料を高温に加熱してプラズマにし閉じ込めることで、熱的衝突を利用した核融合反応を起こす手法をとります。この閉じ込めの方法にも国際熱核融合実験炉ITER(イーター)などが行っている磁場閉じ込め型がありますが、私は大強度の重イオンビームを燃料標的に照射して高温・高密度の燃料プラズマを瞬間的に形成し、核融合反応を起こす“重イオン慣性核融合”について研究を進めています。

Q. 研究室での取り組みを教えてください

核融合発電の実現に関連する高エネルギー密度プラズマの発生方法やその物性の計測方法、核融合発電のシステム解析、核融合炉壁材料、核融合燃料標的プラズマのダイナミクス、大強度の粒子ビーム物理工学などを理論・数値シミュレーションおよび実験を組み合わせて研究しています。現在、重イオン慣性核融合の研究者が集まり、日本発の核融合発電システムの設計を行っています。引き続き、核融合発電の実現を目指した研究を進めていきます。

核融合以外ではプラズマの生成方法やプラズマ自身の特性について、プラズマの利活用などプラズマを扱う全般についても研究活動を行っています。

計算サーバを用いたプラズマの数値シミュレーション
大強度パルスパワー発生装置による高密度プラズマ生成実験

菊池 崇志 Kikuchi Takashi

量子原子力系 教授(2025年4月現在)

  • 2025年4月 - 現在 長岡技術科学大学 量子原子力系 教授
  • 2022年4月 - 2025年3月 長岡技術科学大学 量子原子力系 准教授
  • 2012年4月 - 2022年3月 長岡技術科学大学 電気電子情報工学専攻 准教授
  • 2012年4月 - 2022年3月 長岡技術科学大学 原子力システム安全工学専攻 准教授
  • 2010年4月 - 2019年6月 長岡技術科学大学 テクノインキュベーションセンター 副センター長
  • 2008年8月 - 2012年3月 長岡技術科学大学 電気系 准教授
  • 2010年12月 - 2012年3月 長岡技術科学大学 総合戦略室(連携戦略チーム) チーム員
  • 2007年4月 - 2008年7月 宇都宮大学 工学部 電気電子工学科 電磁エネルギー工学講座 助教
  • 2004年4月 - 2006年3月 宇都宮大学 工学部 電気電子工学科 電磁エネルギー工学講座 助手
  • 2003年4月 - 2004年3月 東京大学 大学院理学系研究科 附属原子核科学研究センター 大学等非常勤研究員 

量子原子力系 准教授 菊池 崇志