先進セラミックスでインフラを光らせる – 小松 啓志

Q. インフラって、何ですか?

英語のinfra(下部)とstructure(構造)を足して作られた日本独自の言葉(諸説あり)になります。ここでは、私たちの生活を支えている道路や上下水道・橋やダム・トンネルなどを指します。あるデータでは、建築後50年を経過する道路橋が2033年に68%になるという報告があります。全体のインフラメンテナンス市場は、世界で200兆円の市場、日本でも5兆円市場になるという算出があります。インフラストックは、1973年のオイルショックごろまで続いた高度成長期、その後の20年の安定成長期の時代に大量に建設されました。笹子トンネル天井板落下事故のような事故を背景に、高齢化したインフラの大規模修繕や更新の計画が急務であると考えます。

Q. 研究内容と今後の展望は?

構造物をオンサイト(その場・ピンポイント・瞬時)にハードとして補修し、更にソフトとして蛍光性(=「視認性」)を付加できる技術を発見しました。「老朽化し続ける道路などのインフラストックを如何に生かしていくか?」と考えたとき、構造物(コンクリート)の表面を光らせることを発想しました。その着想を基に、金属錯体溶液をモルタルに塗布し、バーナーで瞬間的に強熱すると金属錯体溶液を塗布した部位がセラミックス蛍光体に変化することを見出しました。薄暗く中でも光り続けます(残光性といいます)。お陰様で2021年には官民による若手研究者発掘支援事業(若サポ)に採択されました。今後は、地下構造物や夜間の建屋内等での避難経路誘導、構造物のリアルタイム応力異常検出・応力履歴記録システム、人の視認性や反応時間や制動反応をサポートするシステムの提案を行っていき、安全・安心な次世代インフラの提案・発信をしていきます。

Q. 現在の研究のきっかけは?

はい、自身の経験からです。私は千葉県の工業高校(工業化学)を卒業し、長岡技科大の学生、産学連携研究員を経て、現在に至ります。化学の知識を基盤に主に先進セラミックスの作製方法と物性を学びました。本研究は、自身の学生時代の研究内容と所属している研究室のある学生との議論で出たアイディアをミックスしたものです。その他にも、研究室では医療支援を指向した先進セラミックスの研究展開を行っています。ご興味がある方は是非、一度右記のQRコードへアクセスしてください。

学内の分析計測センターの機器で蛍光材料の特性を評価します。
また、研究機器のコアファシリティ化のお陰で、特性評価をしながら、外部機関のスタッフや学生と討論をすることも容易となりました。

小松 啓志 Komatsu Keiji

物質生物系 助教(2025年4月現在)

  • 2022年4月 - 現在 長岡技術科学大学 技学研究院 物質生物系 助教
  • 2014年10月 - 2022年3月 長岡技術科学大学 物質材料工学専攻 助教
  • 2013年5月 - 2014年9月 長岡技術科学大学 産学連携研究員
  • 2013年4月 - 2013年5月 長岡技術科学大学 研究員  

物質生物系 助教 小松 啓志