数理の知見を駆使して信号処理の問題解決に挑む – 黒田 大貴

Q. 信号処理とは?

信号処理は観測されたデータから価値の高い情報を抽出するための総合科学であり、情報通信工学とデータサイエンスの共通基盤となっています。信号処理の代表例としてはノイズを伴って観測された音声や画像からのノイズ除去が挙げられますが、これに限らず多種多様な対象の処理が信号処理の問題として捉えられ研究されています。

Q. どのように研究を進めていますか?

信号処理の問題では観測されるデータに深刻なノイズが加わっていることが往々にしてありますが、このような困難な状況でも所望情報を正確に推定できる方法を数理の知見を駆使して実現することを目指しています。特に、所望情報が持つ特別な性質を見出して効果的に活用するアプローチに着目して研究を進めています。例えば、多くの応用問題では所望情報は主要成分が構造的かつスパース(まばら)に分布する構造的スパース性を有しているのですが、その具体的構造が未知であることが障壁となり、従来の推定法は構造的スパース性を上手く活用できていませんでした。我々のグループは、構造的スパース性を有する所望情報をその構造を含めて推定する極めて困難な問題に対し、凸解析分野で最近明らかにされた知見を駆使することで、最適性の保証された推定法を世界で初めて実現することに成功しています。

Q. どのような応用先がありますか?

音声・画像処理や通信、レーダなどの幅広い対象に応用していくことが可能ですが、特に、気象レーダの専門家と協力して、集中豪雨や線状降水帯などの突発的な気象現象を捉えるべく開発されている最先端のフェーズドアレイ型気象レーダへの応用に取り組んでいます。フェーズドアレイ型気象レーダでは観測時間短縮のために一括で受信した広範囲のデータから気象状況を推定するステップが必要とされるのですが、我々が開発した構造的スパース推定法を応用することで従来よりも格段に高精度で気象状況が推定可能になることが計算機シミュレーションで示されています。

信号処理アルゴリズムの導出
シミュレーション実験

黒田 大貴 Kuroda Hiroki

情報・経営システム系 助教(2025年4月現在)

  • 2022年12月 - 現在 長岡技術科学大学 情報・経営システム系 助教
  • 2020年4月 - 2022年11月 立命館大学 情報理工学部 助教
  • 2019年4月 - 2020年3月 産業技術総合研究所 人工知能研究センター 特別研究員
  • 2017年4月 - 2019年3月 日本学術振興会 日本学術振興会特別研究員 (DC2) 

情報・経営システム系 助教 黒田 大貴