長期的な視点から地方都市をコンパクトにするための計画・制度を考える – 丸岡 陽
環境社会基盤系 助教 丸岡 陽
Q. どんな研究をしているのですか?
長岡市をはじめとする地方都市を対象に、過去の長期的な土地利用データや法制度の運用実績データ等を分析し、将来の土地利用計画・制度を考える、という研究に取り組んでいます。
Q. 色々な都市がある中で、なぜ地方都市を対象にするのですか?
人口減少の最前線であり、コンパクトシティの検討が必要だからです。国勢調査を見ると、日本全体の人口は2010年から減少傾向ですが、地方部では10年早い2000年から減少し始めています。人口が減ると、店舗や公共交通の撤退、空き地・空き家の増加、コミュニティの衰退など、様々な問題が発生します。これらの解決策として、都市の形を人口規模に合わせてスリム化する「コンパクトシティ」の検討が全国で進んでいます。コンパクト、と聞くと強制的な移住を連想する方もいますが、そんな過激な話ではありません。今の建物を更新する過程で、少しずつ時間をかけてコンパクトにしていきます。
Q. なぜ将来の研究のために、過去のデータを集めているのですか?
これは2つの理由があります。1つ目は、コンパクトシティは真っ白なキャンパスに理想の都市を描くものではないので、過去の都市の形や住宅ニーズのトレンドをよく把握しないと、実現可能性のある計画を立案できないためです。2つ目は、人口が急増する前の都市の形や人々の生活は、人口減少後のコンパクトシティを考える上で重要な手掛かりになるためです。
例えば、長岡市の市街地を、過去の人口集中地区(人口密度が高い地域)で塗り分けると、どこが昔からある市街地なのか一目瞭然になります。この塗分けは、高齢化率、自家用車利用率などとも関連があり、コンパクトシティの計画を考える上での温故知新の観点の重要性を示唆しています。
Q. 普段はどんな風に研究を進めていますか?
各地の図書館や公文書館等から、過去の地図、統計、計画書、法令、時刻表などを集め、過去から現在までの経緯をデータ化した上で、行政が作った土地利用計画・制度の効果を検証します。コンパクトシティの議論は総論賛成各論反対になりやすく、一筋縄ではいかない場合もありますが、将来世代に持続可能な都市をバトンとして渡せるようにこれからも研究を進めていきます。


丸岡 陽 Maruoka Akira
環境社会基盤系 助教(2025年4月現在)
- 2023年4月 - 現在 長岡技術科学大学 環境社会基盤系 助教