世界中を結んで力と運動を共有し、バーチャルとリアルの垣根のない世界を作り上げる - 三好 孝典

システム安全系 教授 三好 孝典
Q. 力と運動を共有するということはどういうことですか?
あなたが長岡に居て、相手がドイツに居るとします。あなたと相手は直接触れ合って握手をしたり、腕相撲をすることはできません。そこで、主人の運動や力をそのまま再現するコピーロボットを使います。あなたのコピーロボットをドイツに置いて(以降、コピーinDE)、相手のコピーロボットをあなたの目の前に置けば(以降、コピーinJP)、あなたがコピーinJPから受ける力はドイツ人があなたを押している力そのものです。同様
に、あなたがコピーinJPを押し返す同じ力を、ドイツ人はコピーinDEから感じます。すなわち、どんなに距離が離れていても、お互いが直接握手をしたり、腕相撲をしているのと力学的には何ら変わりがありません。これが「力と運動を共有する」ということです。
Q. バーチャルとリアルの垣根がないとはどういうことですか?
人間の五感のうち、力と運動は触覚に働きかけますが、視覚・聴覚も重要な要素です。あなたの目前にドイツの部屋の風景や音声をバーチャル映像・音声として再現し、さらにコピーinJPの映像にドイツ人の表情を上書きしてしまえば、あなたはドイツに居るのと何ら変わりがありません。今、あなたはリアルな力を感じながらもバーチャルな世界に生きている。そうしたリアルとバーチャルが混然一体となった世界です。
Q. 何が難しいのですか?
音声ではよく「ハウリング」が起きます。これはスピーカから出た音がマイクに入り、その音がまたスピーカから出てきて音がグルグル回るために起きるものです。同じ原理で「力学的ハウリング」という現象が起きます。あなたがコピーinJPから押されて後ろに下がると、コピーinDEも後ろに下がります。するとコピーinDEとドイツ人の間の力が変化して、その力の変化があなたに伝わってあなたの運動が変化します。これがグルグルと繰り返されて、激しい振動現象が起きてしまうのです。これを止めることが課題です。
Q. どこまで実現できていますか?
現在、タイと技大を結んで力学的ハウリングの解消の実験に取り組んでいます。また、VRゴーグルにデジタルツインという技術を組み込むことで、バーチャルとリアルの垣根はかなり無くなっています。コピーロボットを押しているのか、本物を押しているのか、もう区別がつきません。一度試してみてはいかがでしょうか。


三好 孝典 Miyoshi Takanori
システム安全系 教授(2025年10月現在)
- 2019年4月 - 現在 長岡技術科学大学 システム安全系 教授
