地下水の年齢を測定する – 太田 朋子
量子原子力系 准教授 太田 朋子
Q. 地下水に年齢はあるのですか?
人も動物も誕生日を迎えるたびに年をとりますよね。地下水にも年齢があります。たとえば、降水が地表に降下して、地下へ浸透した時間を地下水を採取するまでの時間が地下水の年齢(地下水年代)に相当します。地下水の起源によって地下水年代は様々な定義があります。
Q. なぜ地下水の年代を測定するのですか?
水は我々の生命の維持に欠かせないですが、飲料水となる水は淡水です。地球上の淡水はごくわずかであり、淡水の確保は重要です。淡水の大部分は極地にありアクセスが難しく、地表水は限られた量しかありません。地下水は地球上で人類がアクセスできる水資源です。一方、地下水は地下にありますので地上の人の目から見えない、限られた傷つきやすい資源です。地下水は人間活動の活動に伴い過剰の利用(汲み上げ)により、回復できないものもあります。地下水年代が若い地下水は循環速度が速いため人類が利用をしても回復が早いですが、地下水年代が古い地下水は回復するのに長い時間がかかります。地下水年代は人類が利用しても回復できる地下水か、利用を控えるべき地下水かを我々に教えてくれる指標となります。また、世界的な社会課題である高レベル放射性廃棄物の地層処分でも地下水年代測定は重要です。
Q. なぜ高レベル放射性廃棄物の地層処分で地下水年代測定は重要なのですか?
高レベル放射性廃棄物は地下300m以深に処分します。地下深部で放射性核種が流動する駆動力となるのは地下水だけです。地下水に放射性核種が溶けだしたとしても、放射性核種が移動する速度は地下水の流速以下になります。古い地下水年代(地下水年代が数十万年オーダー)の地下水はほとんど流動しませんから、安全を示す指標(内部被ばくの安全を示す)となります。
Q. 地下水年代はどうやって測定するのですか?
地下水中に含まれる天然の放射性核種(³H,⁸¹Kr,³H+⁴He,³⁶CIなど)や人為起源放射性核種(核実験などで大気に放出された放射性核種)を測定して地下水年代を求めます。地下水年代を正確に測定するためには、環境中の放射性核種の物質循環の解明が鍵となります。私のラボでは地下水年代測定の高度化をめざして、環境中の放射性核種の環境動態解析を行っております。


太田 朋子 Ohta Tomoko
量子原子力系 准教授(2025年4月現在)
- 2020年7月 - 現在 長岡技術科学大学 量子原子力系 准教授