原子力分野における分離科学による元素及び同位体の資源化 - 大沢 直樹

Q. 元素と同位体とは?

私たちが普段接する物質も何らかの材料により構成されています。水であれば水素Hと酸素O、ステンレス鋼であれば鉄FeやクロムCr等が素になっています。これらは「元素」と呼ばれ、原子核中の陽子の数により分類され、それぞれが特徴的な性質を持っています。
一方で、同じ元素にも原子核中の中性子の数が異なるものがあり、これは「同位体」と呼ばれます。水素を例に挙げると、H-1(陽子数:中性子数=1:0)、H-2(同=1:1)、H-3(同=1:2)が挙げられます。中性子の数に応じて質量が変わり、物性に微小な差が生じたり、原子核が不安定になり放射線を放出して、違う元素に変化したりします。

Q. 原子力と分離科学の関係は?

原子力と分離科学は密接な関係があります。原子力発電ではウランを燃料として使用しますが、ウラン燃料を作製するためには、ウランとその他元素の分離(元素分離)と、核分裂しやすいウラン(U-235)と核分裂しにくいウラン(U-238)の分離(同位体分離)が必要となります。また、発電後には、ウランとプルトニウムをその他元素から分離(元素分離)し、再度発電に使用するという方法が採られています。
原子力分野において分離科学に期待されている役割として、もう一つの重要なミッションがあります。それは、原子力発電後にウランとプルトニウムを回収した後に残る放射性廃棄物の処理をどうするのかという問題です。原子力発電では、ウランとプルトニウムをより質量数の小さな元素に分解することにより莫大なエネルギーを取り出しますが、同時に様々な元素が生み出されます。ウランとプルトニウムを分離して残ったこれらの元素を、その特性に応じて分離することで、廃棄物の管理が容易になり、また、希少な元素を資源として活用することができます。

Q. 現在取り組んでいる研究は?

分離技術を用いて、現在は主に2つの研究に取り組んでいます。1つは前述の原子力発電に伴い発生する放射性廃棄物の処理について、触媒として有用な白金族元素を分離回収し、純国産資源として活用することを目指しています。もう1つはがん治療に用いられる医療用放射性同位元素のアクチニウム(Ac-225)について、安定した供給方法の確立に向けて京都大学の研究用原子炉KURを利用して研究を進めています。

吸着材を用いたカラム分離試験
吸着材を用いたカラム分離試験
照射用ターゲットの成形作業
照射用ターゲットの成形作業

大沢 直樹 Osawa Naoki

量子原子力系 助教(2026年4月現在)

  • 2025年2月 - 現在 長岡技術科学大学 量子原子力系 助教
  • 2024年4月 - 2025年3月 東北大学 大学院工学研究科 量子エネルギー工学専攻 (リサーチ・フェロー)
  • 2016年4月 - 2025年1月 日本原燃株式会社 濃縮事業部(ウラン濃縮技術開発センター、ウラン濃縮工場) 

量子原子力系 助教 大沢 直樹