除排雪のスマート化-リモートセンシングで"雪道の今"を可視化 - 高橋 一義

環境社会基盤系 教授 高橋 一義
Q. 研究の背景は何ですか?
雪国では、道路交通を確保するために除排雪が欠かせません。しかし、除排雪作業の担い手の不足や高齢化が深刻化し、除排雪体制の維持が課題となっています。持続可能な除排雪体制の構築には、作業の省力化や効率化に加えて、道路積雪状況を空間的・時間的に正確に知る必要があります。道路積雪状況は、夜間に実施される除雪パトロールで調査されますが、調査の安全確保や限られた人員で広い路線を網羅的にパトロールすることが難しいという課題があります。そこで、リモートセンシング技術を用いて、道路とその周辺の積雪状況を3次元点群(点の集合)として記録し、積雪深や有効道路幅員などの情報を可視化する手法を研究しています。
Q. リモートセンシングとは何ですか?
リモートセンシングとは、対象物に直接触れることなく、センサを使って離れた場所から対象物の種類や状態を調べる技術です。私の研究では、自動車の安全運転支援システムにも採用されているLiDAR(Light Detection and Ranging)を用いています。LiDARはレーザ光を使って対象物までの距離や形状を測定します。
Q. どのように道路積雪状況を記録していますか?
市販の安価なセンサを組み合わせて独自に開発したモバイルマッピングシステム(Mobile Mapping System: MMS)を使っています。MMSは、カメラやLiDAR、測位・慣性センサー(GNSS/INS)を一体化した計測システムで、地図作成やインフラ点検、街並みのデジタルアーカイブなど、幅広い分野で利用されています。人や車両、ドローンといった移動体にMMSを搭載し、移動しながら周囲の道路や建物を含む空間を高密度な点群として記録します。
Q. 積雪深の計測精度はどのくらいですか?
条件が整った実験環境では、積雪深を2cmの精度で計測できます。地域や路線によって除雪実施基準は異なりますが、除雪タイミングの判断に十分活用できる精度です。
Q. 今後の展望を教えてください。
2025年の冬には、開発したMMSを約7日間隔で試験運用し、天候や路面状態に左右されず安定して道路周辺の点群が取得できました。今後は、データ処理の高速化や降雪粒子によるノイズの自動削除処理を進め、準リアルタイムの積雪状況の可視化に取り組む予定です。


高橋 一義 Takahashi Kazuyoshi
環境社会基盤系 教授(2025年10月現在)
- 2025年10月 - 現在 長岡技術科学大学 環境社会基盤系 教授
- 2012年4月 - 2025年9月 長岡技術科学大学 環境社会基盤系 准教授
- 2010年4月 - 2012年3月 国立高専機構福島工業高等専門学校 准教授
- 2007年4月 - 2010年3月 長岡技術科学大学 助教
- 2000年10月 - 2007年3月 長岡技術科学大学 助手
- 1994年4月 - 2000年9月 財団法人リモート・センシング技術センター 研究員
