安全は社会を支えるインフラです。でも、その「安全」とは何でしょうか?どのように「安全」を実現すればよいのでしょうか? – 山形 浩史

Q. 安全とはなにですか?

国際的にも国内的にも「安全とは、許容不可能なリスクがないこと」と定義されています(ISO/IEC GUIDE 51:2014、JIS Z 8051:2015)。

しかし、そもそも想定外の事象はリスク評価に含まれず、データが不十分で不確かさが残ることから、リスクの正確な評価は不可能です。また、社会は許容不可能なリスクをどのように決めればいいのでしょうか。これまでは設計者の視点で安全を定義しリスクを評価してきたのではないでしょか。リスクを指標にした安全に加え、消費者・周辺住民の視点から安全を定義し、それを達成するための方法論について研究しています。

研究成果は、設計者と消費者・周辺住民のコミュニケーションを 可能にし、新技術の社会的受容性向上に貢献します。

Q. 人やその組織は安全をどう実現すればいいですか?

安全の責任を負うのは、設計者や現場作業員だけではありません。トップのリーダーシップの下で、経営層が組織を作り人と資金を配分し、安全設備が導入され、研修が実施されなければなりません。

しかし、人、資金、時間は有限です。効率的な組織とマネジメントはどうあるべきかを研究しています。また、下請けや海外のサプライチェーンを含めてどう安全を確保していくのかを研究しています。

Q. 不正をどう防げばいいですか?

近年、製造業でのデータ改ざん、サービス業での不当表示、金融業での不正融資、メディアの情報捏造などの不正事件が多発しています。これらは経営層からは目の届きにくい現場で起こることが多いですが、その影響は経営を揺るがすほど甚大です。

これまでの不正事件を分析すると、動機(人員・資金の不足)、チャンス(誰にも知られない機会)、正当化(納期を守れた)の三要素で説明でき、継続・拡散し文化となると、継承・遵守されていく不正文化の形成過程が見えてきます。

この形成過程を断ち切るための研究を進めています。

Q. 急に何かが飛んでくるのも怖いですが?

安全確保には、故障やミスへの対策に加えて、外部からの脅威にも備えなければなりません。高速飛翔体(竜巻による飛来物、ミサイル、航空機など)の衝突から人・設備などを守る防護方法を提案し、そのアイデアの効果を計算シミュレーションにより検証することにより、より効果的な防護方法を探っています。

研究の様子

山形 浩史 Yamagata Hiroshi

システム安全系 教授(2025年4月現在)

  • 2021年8月 - 現在 長岡技術科学大学 大学院工学研究科 システム安全工学専攻 教授
  • 2019年7月 - 2021年6月 環境省原子力規制庁 新基準適合性審査チーム長
  • 2017年7月 - 2021年6月 環境省原子力規制庁 長官官房 緊急事態対策監
  • 2017年1月 - 2017年6月 環境省原子力規制庁 長官官房 審議官
  • 2016年4月 - 2017年1月 環境省原子力規制庁 長官官房 実用発電用原子炉規制総括官
  • 2015年1月 - 2016年3月 環境省原子力規制庁 安全規制管理官(PWR担当)
  • 2013年4月 - 2015年1月 環境省原子力規制庁  安全規制管理官(BWR担当)
  • 2012年9月 - 2013年3月 環境省原子力規制庁 国際課長 兼)重大事故対策基準統括調整官
  • 2012年4月 - 2012年9月 経済産業省 原子力安全・保安院 核燃料管理規制課長
  • 2011年7月 - 2012年9月 内閣官房 内閣参事官
  • 2010年7月 - 2011年3月 経済産業省 中国経済産業局 資源エネルギー環境部長
  • 2009年7月 - 2010年7月 経済産業省 産業技術環境局 国際室長
  • 2006年8月 - 2009年6月 国際原子力エネルギー機関(IAEA) 原子力安全セキュリティー局総務課 安全評価アドバイザー
  • 2004年6月 - 2006年7月 経済産業省 大臣官房 大臣官房参事官(環境担当)
  • 2002年7月 - 2004年6月 経済産業省 資源エネルギー庁 エネルギー情報企画室長
  • 2001年7月 - 2002年7月 経済産業省 資源エネルギー庁電力ガス事業部 放射性廃棄物対策調整室長
  • 1998年7月 - 2000年7月 経済協力開発機構 原子力機関 行政官
  • 1987年4月 - 1998年6月 通商産業省(現 経済産業省)

システム安全系 教授 山形 浩史