リグニン分解細菌を「ものづくり微生物」へ -木質資源から有用化学品を生産する基盤技術を確立-

ポイント

  • リグニン分解細菌SYK-6 株を改良し、安価なグルコースを利用できる性質を付与
  • 改良菌株MK-8 は分解能力を維持し、パルプ製造廃液からプラスチック原料PDC を高生産
  • 自然界の細菌を、木質資源から有用化学品を生産する「ものづくり微生物」へ転換

概要

長岡技術科学大学大学院工学研究科博士後期課程先端工学専攻の水出暁登さん(大学院生)、同大学技学研究院物質生物系の政井英司教授・上村直史准教授・藤田雅也助教、森林総合研究所の荒木拓馬主任研究員・鈴木悠造主任研究員・大塚祐一郎チーム長、中村雅哉元森林総合研究所領域長、東京科学大学の道信剛志教授らの研究グループは、リグニン分解細菌 Sphingobium lignivorans SYK-6 株を、木質資源から有用化学品を生産する「ものづくり微生物」へと転換することに成功しました。産業利用の課題となっていた「グルコースを利用できず、増殖にメチオニン(アミノ酸の一種)を必要とする」という性質を代謝工学により克服し、改良菌株「MK-8」を開発しました。MK-8 は、グルコースを利用して効率よく増殖しながら、幅広いリグニン由来化合物を変換する能力を維持し、スギ由来のパルプ製造廃液(黒液)からバイオプラスチック原料PDC(2-ピロン-4,6-ジカルボン酸)を2.71 g/L、131%の収率で生産しました。本成果は、木質資源を原料とする持続可能なバイオものづくりの基盤技術となるとともに、リグニン分解細菌の産業利用を大きく前進させるものです。

研究概要図:改良株MK-8の開発と、これを用いた木質資源からのPDC生産

研究成果の公表

論文タイトル:Metabolic rewiring overcomes physiological constraints in Sphingobium lignivorans SYK-6 for valorization of industrial lignin streams
著者名:水出暁登、加藤諒、藤田雅也、荒木拓馬、鈴木悠造、大塚祐一郎、中村雅哉、道信剛志、上村直史、政井英司
掲載誌:Metabolic Engineering
掲載日:2026年7月2日
DOI:https://doi.org/10.1016/j.ymben.2026.102500

研究内容の詳細(プレスリリース本文)

本学の主な研究者

大学院工学研究科博士後期課程先端工学専攻 水出暁登(大学院生)
物質生物系 政井英司 教授上村直史 准教授藤田雅也 助教

研究者のコメント

前回の研究では、細菌「SYK-6株」がリグニンからのものづくりを実現する可能性を示しました。今回、長年蓄積してきた基礎研究の成果を結集し、工業利用に適したSYK-6株への改良を実現できたことは、私たちが長年目標としてきた成果です。今後は、この成果を基盤として、リグニンを原料とする持続可能なものづくりの実用化をさらに加速していきます。』(政井教授)