糖質を使用せずに基幹芳香族化合物を生産する新たな技術開発に成功―非糖質原料からの「4-ヒドロキシ安息香酸」のバイオ合成法を創出―

ポイント

  • 弘前大学の園木 和典 教授、樋口 雄大 助教らの研究グループは、長岡技術科学大学の政井 英司 教授、上村 直史 准教授、藤田 雅也 助教らの研究グループ、東レ株式会社と連携して、新たな4-ヒドロキシ安息香酸のバイオ合成法を創出しました。
  • これまで主に石油由来の原料から製造されていた基幹芳香族化合物の一種である4-ヒドロキシ安息香酸を、糖質を含まないバイオマス原料から製造することに成功しました。4-ヒドロキシ安息香酸は、高機能性プラスチックやファインケミカルの合成原料として利用されています。
  • 将来的に需要が高まり競合することが予想される糖質を使用しない利点は、安定的な供給、原料コスト面における経済性等を見込め、次世代型バイオものづくりとして期待されます。

概要

4-ヒドロキシ安息香酸は、高性能液晶ポリマーやパラベン類に属する抗菌剤をはじめ、数多くの高機能性プラスチックやファインケミカルの合成原料として広く利用されている基幹芳香族化合物です。4-ヒドロキシ安息香酸は従来、高エネルギーを要するプロセスによって石油由来の原料から製造されています。このような基幹化合物の製造を化石資源から切り離し、カーボンニュートラルを達成するための一つのアプローチとして、再生可能なバイオマスを活用した製造技術の開発は益々注目を集めています。
農業残渣など草本系バイオマスから非可食糖を製造する過程では、芳香族化合物であるリグニンやヒドロキシ桂皮酸類が取り除かれますが、これらは化学構造や分子量分布が不均一であるため、工業原料としての活用は困難でした。本研究では、多様な芳香族化合物を利用して増殖する能力に長けた微生物の代謝を改変し、サトウキビの搾り粕をアルカリ処理して排出される芳香族化合物の混合物を利用して増殖しながら4-ヒドロキシ安息香酸を高収率で生産できる微生物、およびそれを用いた4-ヒドロキシ安息香酸の製造方法を開発しました。従来の糖質を利用した4-ヒドロキシ安息香酸のバイオ合成とは異なり、本手法は糖質を一切使用しない「糖質フリー」なバイオ合成を実現します。

サトウキビバガスをアルカリ処理して得られる芳香族化合物の混合物を炭素源とした4-ヒドロキシ安息香酸のバイオ生産の概要

補足説明

(1)4-ヒドロキシ安息香酸
化粧品や医薬品の防腐剤として広く使用されているパラベン類や、高機能性プラスチック(液晶ポリマーやエポキシ樹脂など)、染料、農薬、医薬中間体の合成原料として広く使用されている基幹芳香族化合物の1つ(2024年の市場規模は8億USドル)。

(2)基幹化合物・基幹芳香族化合物
多くの化合物の合成原料となる出発物質。基幹化合物・基幹芳香族化合物から様々な化学反応を経て、多様な有用物質が製造される。石油由来の基幹化合物として、エチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどがある。

(3)非糖質原料
ブドウ糖、ショ糖、デンプン、セルロース、ヘミセルロースなどの糖質を含まない植物由来の有機物。

(4)リグニン
セルロースやヘミセルロースとともに、樹木や草本植物など非可食バイオマスを構成する主要成分である芳香族高分子。基幹芳香族化合物や芳香族素材製造の原料として注目されている。

論文情報

論文タイトル:Metabolic engineering of Pseudomonas sp. NGC7 for glucose-free 4-hydroxybenzoic acid production
著者名:Yuelin Wang, Zen Ookawa, Yudai Higuchi, Saori Ozeki, Miho Akutsu, Sota Sato, Masaya Fujita, Naofumi Kamimura, Eiji Masai, Hiroyuki Kurihara, Tomonori Sonoki
掲載誌:Bioresource Technology
掲載日:2026年8月22日
DOI:https://doi.org/10.1016/j.biortech.2026.135689

研究内容の詳細(プレスリリース本文)

本学の主な研究者

物質生物系 政井 英司 教授上村 直史 准教授藤田 雅也 助教